なんとか自分を元気にする方法

ベテランのマネキンさん

スーパーの売り場

スーパー

マネキンが減っている

某スーパーに試食販売の仕事に行った。

最近は平日はもとより週末でも同業者のマネキン(派遣販売員)の姿を見ることが少ない。
マネキンの仕事が全体的に減っているようなのだ。

だから、仲間を発見するとうれしくなってしまう。

もともと職業柄なのかマネキンにはフレンドリーな人が多い。

いつも初対面のお客さんと、会った瞬間から仲良く会話をするのが仕事なのだから、仲間のマネキン同士ならなおさらだ。

沖縄弁に「イチャリバチョーデー(会えば兄弟)」という言葉があるが、初めて会う同業者と会った瞬間からまるで親友のようにおしゃべりするとき、いつもこの言葉が頭に浮かぶ。

ベテランのマネキンさん

この日会ったのはベテランのマネキンさんだった。

なぜか開口一番、スーパーの社員の態度が悪いという話になった。バックヤードを歩いていると「どこいくんだ」と、きつく問いただされたという。まるで泥棒あつかいだったと怒っている。

私も同じスタッフから同じように声をかけられた(ベテランのマネキンさんよりは1時間遅れの入店だった)。
一瞬、なにか責められているように感じたけど、私の用件を聞くと「ちょっと待って」といって、売り場から担当者を連れてきてくれた。

広い売り場で自分の担当者を見つけるのはいつも至難のわざなので、結局このスタッフは親切な人なのだと思った。ただ顔と言葉と動きがきつく攻撃的な感じなので、初めて接するとなにか攻撃を受けたように感じてしまうのだ。

珍しいことだが、この店舗にはもっと怖い外見の従業員がいて、彼は店長だった。あいさつしても無言ではね返されるような冷たい鋼鉄製のロボットみたい。

先のベテランのマネキンさんは「店長にあいさつしたけど無視された」と、かなり怒っていた。

そうやって2人で従業員の悪口をささやきあっていたら店長の姿が見えたので、「まずい、店長だ!」と号令をかけて、2人は一目散に分かれた。

スーパーのうわさ話

20-30年以上のキャリアがありそうなベテランさんは関東各地のスーパーで働いていて、しかも記憶力がかなり良いようだ。

普通マネキン同士でも活動範囲が異なるので、共通の店舗の話題で盛り上がれることは案外少ない。

でも、この日はたまたま私の近所のスーパーで、ベテランさんもこの界隈のスーパーに詳しかったので、近隣の他のスーパーの噂話もできて面白かった。

ベテラン:「今日お客さん少ないね。近くに□□スーパーがあるからね。あそこお客さん多いよ」
私:「先日行きました。あそこはけっこうにぎわってますよね」

ベテラン:「○○スーパー△△店はお客さんが多く、チェーンで売上ナンバー1。スタッフも生き生きとしていて感じがよく、お店全体がいい雰囲気」
私:「そうそう。△△店は好きな店。働くのが楽しい!」

ベテラン:「○○スーパ☆☆店はすごく売れるよ~。(近くにいた社員に・・)あそこは売上げいいでしょ?」
社員:「トップ5には入ってるでしょう」

ベテラン:「東京のお客さんは試食しない。だから販売するのが難しい。千葉や埼玉のお客さんはみんなよく試食してくれるよ。そのほうが試食販売はやりやすい」
私:「いつも東京がメインなので・・」
ベテラン:「食べないでしょ」
私:「ずっと我慢です。たまに埼玉とかに仕事に行くと楽しくてやりやすい」

解釈次第で世界が変わる

ベテランさんのほうが1時間早上がりで、帰り際に私の売り場に立ち寄ってくれた。

なぜかまた店長の悪口になった。
この店長は私たちマネキンを見下しているのだという。
ベテランさんはキャリアが長いので、態度を見ればそのことがすぐにわかるそうだ。

本当にそうだろうか?
私は店長がマネキンを見下しているとは思わなかった。

あいさつしたときはコワモテでにらまれたように感じたけど、その後は私が立っている売り場の前を通り過ぎるとき、こっちを見てかすかにうなずいてくれたような・・。
そこに『その調子でがんばれよ』というメッセージが込められていると感じたのは錯覚だろうか。

他にも、私がおじいさんのお客さんから紙パック飲料の商品について聞かれて、売り場に案内してお話ししているとき、たまたま店長がそばにいて商品整理をしながらこちらに注意を向けていた。『必要があれば質問に応じたい』という気配が感じられた。

私はこの店舗は初めてでもちろん商品にも詳しくないので、店長にお客さんをバトンタッチしてもらった。その一連の流れはいい感じだったと思う。

店長はコワモテでしかも感情表現が下手なためにソンをしてる人だと思う。本当は普通にいい人だと思う。ベテランのマネキンさんは自分の判断力を過信して、逆になにかソンをしているんじゃないだろうか?

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