1. 『霧のなかのゴリラ』(ダイアン・フォッシー著)
1967年に始まり10年以上続けられたダイアン・フォッシー博士のルワンダにおけるマウンテンゴリラの観察記録である。
ゴリラと人間のDNAの違いはわずか3.4パーセントだという。
この本を読むと、ゴリラの表情、しぐさ、好奇心の強さ、行動にかなり人間に近いものを感じる。
どこで両者は分かれてしまったのか?
ゴリラも将来なにかの拍子に、人間に似た道を歩み始めるのだろうか?
そんなことを考えさせられる。
アフリカの火山国立公園内の森で毎日寝起きし、ゴリラを追って生活するのは大変なことだ。
しかし大自然の中でゴリラを観察する生活に生きる喜びを感じる人がまれにいて、ダイアン・フォッシー博士はその一人なのだ。
ほとんど言葉のつうじない現地のスタッフとやりとりしながら、テントをはって、キャンプして、森を歩きまわる。
ゴリラを見つけたら、身をひそめて観察する。
ゴリラはときどき見え隠れするフォッシー博士の存在に気づき、警戒し、少しずつ慣れていく。
特にこどものゴリラは持ち前の好奇心を発揮してフォッシー博士に接近してくる。そしてついにゴリラとの交流が始まる。
ダイアン・フォッシー博士は観察をつうじてどんどんゴリラにはまっていった。
ゴリラとの距離が近くなればなるほど、人間との距離が広がっていく。人間は自然の破壊者だからだ。
ゴリラを守る活動は、密猟者との戦いを意味する。
森にしかけられた野生動物を捕らえるためのワナを探して、見つけたらどんどん壊して取りのぞく。フォッシー博士のゴリラ愛と保護への意志と実行力がおそろしい。
フォッシー博士はマウンテンゴリラの観察記録をたった一冊の本(本書)にまとめて亡くなった。
現地のキャビンで何者かに殺害されたのだ。殺害者はいまだにわからない。
ダイアン・フォッシー博士から直接指導を受けた研究者の中に山極寿一氏がいた。
彼は『サルと歩いた屋久島』でフォッシー博士殺害事件について言及している。
フォッシー博士はゴリラの保護を優先するあまり人間嫌いになり、密猟者はもとより現地のルワンダ人スタッフ、欧米からゴリラを研究しにやって来る学生や研究者からも反感を抱かれていたそうだ。
とはいえ『霧のなかのゴリラ』はルワンダの大自然を背景にしたゴリラとダイアン・フォッシー博士の愛の物語である。
ゴリラを知るにはイチオシの一冊。ぜひ読んでみてほしい。
2. 『サルと歩いた屋久島』(山極寿一著)
1970年代半ばにスタートした山極寿一氏の鹿児島県屋久島におけるヤクシマザルの観察記録である。
山極寿一氏のヤクシマザルに対するアプローチは上記のダイアン・フォッシー博士のものとはだいぶ違う。
観察チームのメンバーとの関係も良好だし、現地スタッフも積極的に活動にまきこんで仲間にしてしまう。
山極氏はサルはもとより人間、自然など、他者を尊重しようとする姿勢が強い。
『サルと歩いた屋久島』を読むとそのことがわかる。
この本には屋久島のヤクシマザルだけでなく、コンゴにおけるゴリラの観察記録も収録されている。
山極寿一氏の関心はゴリラの保護というよりは「人類進化の謎を解きたい」というほうが先のようだ。
コンゴでゴリラの調査隊を組織し、信頼できるメンバーを集めて、さらに地元コンゴの研究者にも声をかけて協働する。
地元の人がゴリラや自然と共存でき、かつ収入にも結びつくような方法を探っていく。
外国人が自分たちのやり方を一方的に押しつけるのでなく、現地のスタッフ自身に考えて、動いてもらう。
山極寿一氏がかかわって始まったコンゴの自然保護活動は現在も続いており、世界にも広がっている。
※コンゴでゴリラと人間との共生を目指して活動しているNGO
3. 『ココ、お話しよう』(F.パターソン+E.リンデン著)
「動物と話をしたい」という人間の夢を実現したような本。
動物は雌ゴリラのココ、人間はアメリカ人女性ペニー(F.パターソン博士)。
「ココ計画」は1972年から9年間続けられた。
ゴリラのココは人間と同じように言葉を話すことはできない。
ペニーが教え、ココが覚えたのは、アメリカ・サイン語(アメスラン)という手話だ。
本書にペニーとココの実際の会話が詳細に記述されているが、ちゃんと会話になっているので驚くほかない。
またココはたぐいまれなるユーモアの持ち主で、手話でジョークもまじえてくる。
そんなことアリ!?の内容なのだ。
ぜひ一読を。