なんとか自分を元気にする方法

欧米に寝たきり老人はいない/宮本顕二・宮本礼子

高齢の両親への備え

離れて暮らす夫の両親が93歳と88歳と高齢なので、介護の問題などがいつふりかかってくるか分からない。

私たち夫婦には子どもがおらず、私は義母と付かず離れずの関係をキープし嫁姑としては結構うまく付き合ってきたので、助けが必要なときはできるだけサポートしたいと思っている。

嫁と姑が互いに相手を嫌わずに四半世紀以上関係を続けてこれたのは、ひとえに姑が賢いからだと思う。

こういった上下関係においては、立場が下の者に主導権はないからだ。

そんな姑は認知症の家系なのだと夫は言う。

最近、物忘れや頓珍漢な言動がときどき見られるようになってきた。

だから備えとして認知症関連の本を図書館で借りて読んだり、最終的な医療のあり方について研究したり、考えたりしている。

なにしろ私は介護や看取りについてはまったく何も知らない。

姑が認知症になって、これまでと異なる予想もできない行動を始めたら、混乱して逆上するだろう。

そうなりたくないから今から勉強している。

最良の終末期医療とは?

認知症の本からいつの間にかその周辺部にずれて『欧米に寝たきり老人はいない』を読んだ。

宮本夫妻が視察した欧米6か国の施設

1.スウェーデン・ストックホルム

・若年性認知症グループホーム「ストックサンド・ガーデン」:施設で毎日ビールが飲める

・ナーシングホーム「ブロムステル」:昼間からワイン飲み放題

2.オーストラリア・メルボルン

・バンクシア緩和医療サービスセンター:看護師ががん患者などの自宅を訪問し、緩和医療をおこなう

・カリタス・クリスティ・ホスピス病院:入院期間3週間以内の疼痛緩和病院

・ナーシングホーム「アッシー・イタリアン・コミュニティセンター」:職員・食事がイタリアン

・「バッセイ・ハウス」:退役軍人とその家族のための介護施設

3.オーストリア・ウィーン

・ナーシングホーム「ペンショニステン・ホーンハウザー」高齢者が食べなくなったときに点滴や経管栄養で延命はしない方針

・ナーシングホーム「聖カタリナホーム」:少数の胃ろう患者がいるが紹介してもらえなかった

・「ウィーンの森老年病センター」:ヨーロッパで一番大きな施設(老人病院とナーシングホームの中間)、入院患者約1000人、医師100人、患者は全員この施設で亡くなる

4.オランダ・アムステルダム

・訪問介護ステーション「サラ」:毎日1時間ていど利用者宅を訪問し食事・掃除・洗濯などをおこなう

・認知症専門ナーシングホーム「アムスタ」:入所者全員に終末期の希望を書面で確認

5.スペイン・バルセロナ

・デイサービス「アークルス」:昼食は外部から配送

・ナーシングホーム「カバレロ」:入浴の順番待ちで車いすの人たちが長蛇の列

6.アメリカ・カリフォルニア

・高齢者高級介護施設「ラス・パルマス」&「レガシー」:月決めレンタル部屋の月額50万円(素泊まり)~90万円(食事付)、認知症の場合100万円以上

・高齢者高級介護施設「アトリア・デル・ソル」:部屋代だけで毎月35~50万円、職員が入居者の食事介助することを禁止

・認知症専門介護施設「カールトン」:施設内で内服以外の医療行為はしない、看護師は血圧測定もおこなわない

・認知症専門介護施設「シルベラド」:平均入所期間18か月、多くがここで亡くなる、ペット療法をおこなっているが、建物全体に臭気が充満

・高齢者コミュニティ「カスタ・デル・ソル」:自立した人たちが自由に暮らし、人生を楽しむ場所、娯楽施設充実

『欧米に寝たきり老人はいない』を参考に終末期医療を考えたい

実際に終末期医療にかかわっている医者夫婦が書いた本なので、とても参考になり、ためになる。

特に本書では、日本で当たり前に行われている終末期医療が、他の国ではまったく行われていないという天と地がひっくり返るような事実が明らかにされている。

『欧米に寝たきり老人はいない』を読めば、高齢の親の終末期にどのように対処すべきかが分かってくる。

1.経管栄養・胃ろうはしない

高齢者に苦痛を与える処置。苦痛で暴れると拘束も加わる。寝たきりのまま長生きさせてしまう。経管栄養・胃ろうで(誤嚥性)肺炎は防げない。

2.食べられる限り・飲める限り、自力で生きてもらう

人間は最終的には、死期が近づくと(約2週間前くらいから)、だんだん食べなくなり、飲まなくなっていくという。

意識が朦朧としてきて、苦痛も感じなくなっていく。

最後は眠るようにして亡くなる。

3.終末期はなるべく点滴もしない

死期が近づくと、体が自然に枯れて死への準備を始める。

その流れに対して中途半端に栄養を与えると、自然なタイミングで死ねず、延命された期間の分だけ不必要に変な痩せ方をしてしまう。

胃ろうも点滴もしないで、眠るように安らかに亡くなる、という事実を裏づける研究があります。動物を脱水や飢餓状態にすると脳内麻薬であるβーエンドルフィンやケトン体が増えます。これらには鎮痛・鎮静作用があります。自然な看取りで亡くなった方にも同じことが起こっているはずです。

日本の医療制度が寝たきり老人を増加させる!?

日本では、国民皆保険によって、国が国民の医療費の多くを負担している。

国は支払う医療費を減らしたくて、2年ごとに診療報酬を値下げする。

医療費を受け取る側の民間の病院は収入が減るのを避けるため、過剰な医療(濃厚医療)をおこなわざるをえなくなる。

公的機関と民間の利害が対立しているのだという。

終末期の高齢者に濃厚医療(本来不必要な医療?)をおこない延命させることで寝たきり老人が多いのだという。

医療制度以外の要因としては、高齢者の家族が、人間は死ぬ直前(?)まで食事をし続け、食べないで痩せると本人に苦痛をあたえると思い込んでいて、終末期の最後まで点滴などを要求することがある。

これが逆に、高齢者の安らかな死を妨げているのだという。

また人間は結局、最後は死ぬのだということを受け入れられなくて、不要な延命措置を求める家族も多いという。

スウェーデン・オーストラリア・オーストリア・オランダ・スペインには、国や市などが運営する公的な医療機関が多く、日本と違い、医療費を支払う側と受け取る側が同じ公的機関である。

だから、高齢化による医療費を抑制したいという方針が政府主導で進められて、高齢者に余計な延命措置はしない。過剰な医療はおこなわないという流れになっている。

とはいえ、経済的な理由だけでなく、「人生は楽しむためにある」ので、人間的な喜びを感じられなくなってまで延命したり、苦痛を与えるだけの医療をおこなうのは倫理にもとるということで、国で終末期の医療方針を決めて対応している。

アメリカには、民営の病院が多く、支払う側も民間の保険会社なので、無駄で非合理的な医療をはぶきたいという方針が一致している。

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