ムーミン入門
飯能にあるトーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園に行ったのがきっかけでムーミンの本を読みはじめた。
最初に読んだのが『ムーミン谷の仲間たち』で、変な登場人物ばかり出てくるのでとても面食らった。
『ムーミンって、あんまり面白くないな』と思った。
とはいえ、1冊だけで判断するのは早計なので、他のタイトルも図書館で次々に借りて読んでみた。
講談社の青い鳥文庫からは合計9冊のムーミンシリーズが出ているが、面白さにけっこうばらつきがあることがわかった。
個人的には『ムーミン谷の冬』が、厳しくも美しい冬の世界を描いていて好きだった。
自分が冬が好きだからということもあるが、読んだのが12月半ばだったからかもしれない。
フィンランドの日本より数倍も厳しい冬の情景を読んでいると、自分の寒さを忘れるというメリットがあったのだ。
また、冬から春に季節が移り変わるようすが活写されていて、『フィンランドの春ってこんなふうなんだ!』と、ダイナミックな自然の描写に目をひらかれた。
大自然の中で生きるムーミン
ムーミンの世界は大自然の世界だ。
ムーミンの物語を読むと、都会生活で忘れてしまった動物や人間のかつての野生的な生き方を思い出す。
現代の私たちだと、キャンプ生活をイメージすれば、ムーミンたちの生活に近づけるかもしれない。
自然は本来激しく、気まぐれで、恐ろしい。
自然の中にポツンとひとりでいたら、他の生き物に出会えたとき、とてもうれしい。心強い。
食べ物を分けてくれるかもしれないし、話し相手になってくれるかもしれない。
人間同士、人間と動物がそんな素朴なつきあいをしていた時代が確かにあった。
多様性を生きるムーミンの世界
ムーミン世界の生き物たちはサイズも見ためも性質も多種多様だ。
それぞれ自分のやり方で、好き勝手に生きている。
人間、動物、虫たちがそれぞれ独自の生活をいとなんでいるように。
ムーミンの物語で、私がいちばん苦手な登場人物はフィリフヨンカだ。
どちらかといえば自分に近い性格なので身につまされる。
フィリフヨンカは大変心配性・苦労性でいつもせかせか動きまわっている。
好きなことは、掃除と料理みたい。
読んでいて愉快なキャラクターではない。
ムーミンの物語には、フィリフヨンカみたいに悩みの多いもの、悪い性質をもったもの、内気なもの、いじけた性格のもの、口の悪いものなど、ネガティブ志向の登場人物がたくさん出てくる。
私なんかはフィリフヨンカが嫌いで、彼女のようすを読んでいるとイライラするが、ムーミンや他の登場人物たちはあまり気にしない。
ムーミン世界はとてもおおらかなのだ。
読んでいると最初は違和感を感じるが、だんだん感化されて、ムーミン的感性に慣れてきて、『それもいいかな』と気持ちが軟化してくる。
現実の自分をとりまく世界も、日本人だけでなく外国人も増えてきて、『違うな』と感じることも多い。
自分と違うものとどうつきあったらいいか? ということをムーミンの物語は教えてくれる。
それぞれ違うことが当たり前で、違うものたちが出会うことによって、お互いのものの見かたや行動に変化が生まれ、世界が一新される。
ムーミンたちはそんな刺激的な日常をおくっている。
大人にもムーミンはおすすめ。
海外旅行にいったみたいに新しい世界がひらけます♪