声と姿勢が悪い
アレクサンダー・テクニークという姿勢矯正メソッドに関する本を2冊読んだ。
アレクサンダー・テクニークのユニークな点は音楽関係者(声楽家/演奏家)にも幅広く活用されているところだ。
私自身にも販売者なのに声が小さい(どうしても大きな声が出ない)という日常的な悩みがあったためアレクサンダー・テクニークの存在を知り解決をもとめた。
また、昔から姿勢が悪くて(中学校の同級生に歩き方が変だと笑われたこともある)、いまだに直したいと思っているけど直せていないという悩みもあった。
アレクサンダー・テクニークで声と姿勢を矯正したい。可能だろうか?
アレクサンダー・テクニークとは?
アレクサンダー・テクニークとは、フレデリック・マサイアス・アレクサンダーが考案した姿勢/動作矯正技法だ。
人間の姿勢や動作は本来動物のように無理せず自然体で美しいものである。
身体のパフォーマンス(能力)を最大限発揮する方法は身体自身が知っている。
ところが人間は身体そっちのけで頭でっかちになってしまった。
頭が身体を支配するようになった。
子供の頃は自然体で、それぞれ自分に合った身体本来の姿勢や動きをしているが、そのうち大人からの命令によって人工的な動きをするよう意識が働くようになる(気をつけ/休め/前にならえのように)。
身体本来のパフォーマンスを引き出すより早く大人の指示どおりに素早く動くことが要求される。
その積み重ねが習慣になり、脳と身体がパターンを覚え、自然体は人工的動作に置き替えられる。
「ああしろ」「こうしろ」という命令を聞いた瞬間から、私たちの脳や身体は緊張状態/戦闘状態にはいる。
つねに緊張状態/戦闘状態を強いられる人間はリラックスして幸福感を感じられなくなる。
長年かけてつちかった緊張状態/戦闘状態を解除して、本来の自然体を取り戻そうというのがアレクサンダー・テクニークの目的だ。
具体的な方法は本に示されているが、これが革新的でけっこう難しい。
まず『こうしなければ』と思うことが身体を緊張状態にするので、『こうしなければ』に意識を向けないようにする。
何よりも自然の力学にしたがった状態に身体をもっていくと最高のパフォーマンスが引き出されるわけだから、心を無にして身体本来の機能が立ち上がってくるのを待つ時間が大切だ。
いちばん基本的で重要なのは呼吸だが、呼吸さえも私たちは満足に自然体でできていないことが多い。
頭や首の配置や角度が人工的にゆがめられているせいで、自然で十分な呼吸ができていない。
楽な姿勢で自然に呼吸できると幸福度が上がる。
自分の姿勢をチェックするのは難しいことだ。
アレクサンダーは演技者でもあるので、鏡でうまく声が出ない原因をさぐっていて、自分の姿勢のゆがみに気づいたそうだ。
自分の姿勢は自分がイメージしていたかたちと大きく異なっていてショックを受けたという。
きっとそのギャップは私たちにもあてはまる。
そして本当は、動物のように、無理のない自然な姿勢/動きは、本来私たちの身体にそなわっているはずなのだ。
アレクサンダー・テクニークの本
1. 『アレクサンダーテクニーク』
★著者:ロン・ブラウン
★出版社:ガイアブックス
著者はロン・ブラウンとなっているが、内容はアレクサンダーが書いた4冊の著作の要約本だ。
その4冊は、1918年から1946年に出版された以下の著作だ。
(1)『人類が受け継ぐ至高の恵み』
(2)『個人の建設的な意識的コントロール』
(3)『自己の使い方』
(4)『生き方の普遍定数』
タイトルからも分かるように、とっつきにくく、内容はどこか抽象的でまわりくどい。
「で、どうすればいいの!?」と言いたくなる。
実際にどうすればいいのかは、次の本に書いてある。
2.『実践アレクサンダー・テクニーク』
★副題:〜悪い姿勢の習慣を正し、健康を改善する 〜
★著者:ロバート・マクドナルド&カロ・ネス
★出版社:ガイアブックス
この本は、アレクサンダー・テクニークの基本的な考え方をシンプルに分かりやすく説明してくれる。
イラストや写真も多く、アレクサンダー・テクニークの入門書として最適(ポケットサイズ、重いけど)。
姿勢/動作のポイント
ぜんぶ実行するのはとても難しそう・・・。
でもなんとか身につけば幸福度が上がるのかも。
・刺激に対して反応しない/ 行動について意識しすぎない/頑張りすぎない(筋肉が緊張してのびのび動けなくなる)
・身体の各部を圧迫しない(頭/首を負荷のないようバランスよく配置し、肩/背中をのびやかに解放する)
・胸を大きく/背中を大きく開く
・頭は上へ前へ配置する/アゴを引く(首に重みをかけない/頭を後ろにそらさない)
・まっすぐ座る(だらっと座ると内臓に負荷がかかる)
・動きは片方ではなく両方にのばす(身体は上下左右、全方向でバランスをとっている、動物が高速で走る動きのように)
・身体を片方にかたむけすぎない(反動で逆サイドの筋肉が緊張する)
・日常生活で緊急時の反応をしめさない(「首の筋肉が収縮し、頭が引っ込み、肩が上がり、息を飲む」といった恐怖反応)
・ヒザを立てて仰向けに寝て、全身の緊張をほぐす(緊張症の人におすすめのポーズ、重力に抵抗しなくていいのでとてもラク、力を抜きやすい)
■実践 アレクサンダー・テクニーク (ナチュラルヘルスシリーズ) – ロバート・マクドナルド&カロ・ネス■
実践 アレクサンダー・テクニーク (ナチュラルヘルスシリーズ) – ロバート・マクドナルド&カロ・ネス(ガイアブックス)
アレクサンダー・テクニークの失敗例
アレクサンダー・テクニークの本を読んで実践しようとした。
立ち仕事なので、立っているときに身体の負担を減らして楽に過ごしたいと思った。
要は、石をバランスよく積み上げるように、脚・尻・腰・胸/背中・首・頭をタテに配置すると、どこかに負担がかたよらず無理なく立っていられるという(身体が一方に曲がると、身体が自然にバランスをとろうとする反動で逆側の筋肉がかたくなる)。
自己チェックするなら壁に足・尻・背中・頭をくっつけて立つと、それが理想的な立ち姿らしい。
いつも壁があればいいんだけど、スーパーでの試食販売中はほとんど壁がない。
先日も、当人はアレクサンダー・テクニークしてるつもりだったんだけど・・・
3日間自己流アレクサンダー・テクニークを続けると、なぜか太ももの前側が筋肉痛みたいに痛くなった。
なぜだろう?
インターネットで調べると、反り腰の人は太ももの前部に負担がかかると書いてあった(あるいは猫背の人も)。
私はたぶん反り腰/でっちり(出っ尻)で太ももの前部に筋肉がついている(太ももが太い)。
何十年も反り腰人間として生きてきた結果、アレクサンダー・テクニークの思想にしたがって楽な姿勢をもとめると、身体にそなわった反り腰姿勢が自然に選択されたらしい。
そして反り腰姿勢をキープした結果、太もも前部の筋肉に負担がかかり、筋肉痛になったらしい。
アレクサンダー・テクニークの失敗例だ。
でっちりのなおしかた
反り腰/でっちりを矯正するには、お腹の筋肉とお尻の筋肉をひきしめなければならないそうだ。
つまり、でっちりのS字型のカーブをI字型に近づける意識で?
ほかに簡単にでっちりを矯正するための運動としては、仰向けに寝て、体育すわりみたいに両足を曲げて両腕でかかえこむ。ぎゅっとかかえて、お尻を床からはなす(上にあげる)。
この動きはたしかにでっちりのかたちと反対方向の動きで、実際にやってみると少し苦しい。
このかたちが楽にとれるようになれば、でっちりがなおったということになるのかもしれない。
アレクサンダー・テクニークどころの騒ぎではない?
アレクサンダー・テクニークの楽な姿勢をとっているつもりで、でっちりに拍車をかけていたのだから、もう私が正しい姿勢をとるのは不可能かとがっかりした。
とりあえずアレクサンダーが書いていたとおり、目標を設定してやる気満々になると身体に過剰な力が入るということは、今回の太もも筋肉痛事件によって証明された。
さて、でっちりのなおしかたは・・・?
仰向けに寝て、背中からお尻にかけてのS字カーブをI字にのばす努力をした。
お腹とお尻をひきしめる運動。
このとき意識ではやってるつもりでも、身体がイメージどおりに変化しているか自分ではわからない。
だからお腹と背中を両手でさわりながら、動きを確認しながらやってみた。
そしたら腰がでっちりになる動きがはっきりわかった。
どれくらいお尻がでっぱるのかも。
今度は立っているとき/歩いているときに、お腹とお尻のかたちを両手でさわって確認してみた。
まっすぐの姿勢とお尻が後ろにつきでたでっちりの姿勢のちがいが自分ではっきり確認できた。
自分はずっとでっちりになっているのかと思ったら、基本的にはまっすぐ立っている。
でもたまに力んだり、緊張したりするときに、お尻がでっちりになるということがわかった。
思ったよりもでっちりの症状は軽かったので、これは自分で意識してなおせるかもと希望がもてた。
自分の姿勢チェック
銭湯に行くのが趣味なので、先日行ったときに鏡で自分の姿勢チェックをした。
なにしろ銭湯は鏡だらけだ。
まず身体を洗うときにイスに横向きにすわって、すわった姿がまっすぐかどうかを後ろの鏡でチェックした。
そんなにおかしいところはないと思う。
今度は脱衣所で横向きに立って、大きな鏡で全身の姿勢をチェックした。
ちゃんと立てている気がする。
あえていうならもう少し頭を上にのばす意識を持つ方がいいかもしれない。
試しに脱衣所の壁に背中をあてて立ってみると、以前よりも無理なく身体が壁にそってくっつく気がする。
短期間で効果がでているのだろうか?
改善の兆候
要は、本来の自然な姿を取り戻すと、今までよりも身体の働きが良くなり、それが実感される。
上述の『アレクサンダーテクニーク』に改善の兆候が記されている(22ページ)。
顔→無理で不自然な表情が薄らぐ
目→明るくなる
血行→良くなる
皮膚→明るくなる
声→質と強さが変化する