6月の最終日。
ランチタイム。
晴れていればいつもスーパーでお弁当を買って公園で食べるのだが、この日は雨模様。
雨の日はだいたい職場近くの中華料理店に行く。
歩いて5分くらい。
今日は木耳と豚肉の卵炒めを注文した。
ご飯、中華スープ、杏仁豆腐がついた定食で税込750円。
ここの料理はどちらかといえば薄味なので気に入っている。
澄んだとろみのある中華スープもほとんど味がついてないほど薄味だ。
食べ終わって会計しようとして、ドキッとした。
カバンの中に財布が入っていないのだ。
まさかと思ったが、本当に入っていない。
職場で脱いできたエプロン(制服)のポケットに入れっぱなしにしてきたらしい。
一瞬すごくあせったけど、大丈夫だと思った。
私はこの中華料理店に1年以上通っている。
最近はちょっとメニューに飽きて頻度が減ったけど、雨の日は2日続けてランチを食べにいくこともあるし、週2のペースで通っていた時期もあった。
いつもホールを担当している中国人の女性にはしっかり顔をおぼえられているし、彼女自身が私が勤めている店の客でもあるのだ。
だから「職場に財布を忘れたので、取ってきてもいいですか?」ときいた。
すると彼女は意外なことに、「ううん、そんなこと大丈夫。次に来たときでいいから」というのだ。
確かに私は職場も知られていて食い逃げはできないが、財布を取りに引き返す時間はギリギリあるし、きっちり支払いを済ませてしまったほうがいいのではないか、と日本人なら思うのだが・・・
不思議なことに、彼女はこの件をぜんぜん嫌がったり、迷惑に思ったり、困惑したりしていない。
逆に、今まで見たことがないくらいのとても優しい微笑みを浮かべながら私にツケを積極的にすすめるのだ。
その好意をかたくなに断るとかえって失礼にあたると感じたので、「じゃ、次に払うね」と、彼女に合わせてカジュアルに応じて店を出た。
これまで経験したことのない対応で、つくづく中国人は鷹揚だ(大陸的?)だと思った。
その店には「香港料理」という看板がかかげてあり、点心も出している。
香港の人なのだろうか?
メニューに客家料理があったので、客家なのかなと思ったこともある。
彼女のおかげで中国人に対するイメージがぐんと良くなってしまった。