インドをテーマにした本が読みたくて手にとった。
インドのカルカッタが舞台のミステリーだ。
作者はイギリス生まれのインド人。
『カルカッタの殺人』の主人公は、イギリスからカルカッタに赴任した白人のイギリス人だ。
彼の部下の一人は現地のインド人で、イギリス人の上司との異人種間のデリケートなコミュニケーションがこの小説の読みどころの一つとなっている。
でも作者はインド人なので、部下の方に自己を投影しているのか?
部下のインド人の口からときどきキレのあるイギリス人批判が飛び出すのは興味深いし、また説得力もあるのだ。
時は1919年。
インドはイギリスの統治下に置かれている。
イギリス本国から派遣された役人たちはインドに来れば誰でも使用人をタダ同然の金額で大勢雇い、まるで王様のような暮らしができる。
またそうやってイギリスの威信をインド人に示し続けなければ、同じイギリス人から白い目で見られるようなねじれた状況。
イギリスからインドに赴任した当初はフレッシュな感性のイギリス人でも、現地滞在が長くなるにしたがってインド人差別を身につけるという。
イギリス人はインド統治を維持するために、インド人よりも常に道徳的に正しくなければならない。
イギリス人が道徳的に優位にあることがインド統治の理由づけになっている。
なので、インドにいるイギリス人はインド人に対して完璧に優位に立っておらねばならず、その不自然さを維持しようとすると、インド人と個人的な友情をはぐくむのが難しくなるジレンマにはさまれる。
でも、人間同士が毎日交流して、一緒に仕事をしていれば、人種の違いは何気に越えてしまうのが現実というものだ。
人種の違いよりも、人間としての相性が人間関係を決めることは多い。
作者はインド人で、彼が植民地時代のインドを描いているのだから、インド人がイギリス人をどう見ているのかが、登場人物をつうじて率直に語られる。
イギリス人が書いたインドとは逆方向の目線だ。
インドやイギリスに興味がある人におすすめの一冊。
<あらすじ>
1919年、英国領インド。赴任したばかりのウィンダム警部は、英国人高官が殺害された事件の捜査の指揮をとる。優秀なインド人警察官であるバネルジー部長刑事を相棒に、ウィンダムは現地の事情に分け入っていくが……。書評紙誌に絶賛された歴史ミステリ登場!
(※アマゾンより引用)