(※ネタバレありです)
スウェーデンの作家ヘニング・マンケルが書いた『殺人者の顔』を読んだ。
大人気のクルト・ヴァランダーシリーズ第1作目だ。
想像を超える面白さで、衝撃を受けた。
舞台はスコーネというスウェーデンの田舎町。
農家の老人が殺されるところから話が始まる。
ヴァランダー刑事たちの懸命な捜査にもかかわらず、なかなか犯人にはたどりつけない。
そして、犯人はとても意外な人物だった。
殺人事件の謎解きはとうぜん興味深いが、外国のミステリーを読むのはそれだけが楽しみではない。
スウェーデンの人がどういった土地で、毎日どんな暮らしをしているのか、どんな物を食べているのか、ということを同時に知ることができるのが大きな喜びなのだ。
日本ではスウェーデンなど北欧の国は、福祉国家の代表で、幸福度が高い先進国というような良いイメージがある。
でも実際に『殺人者の顔』を読むと、そんなイメージはふきとんでしまう。
この小説の舞台が1990年に設定されているからかもしれない。
34年前にスウェーデンは多くの問題をかかえていたが、今は理想的な国に変わったのだろうか?
一方、34年前のスウェーデンは現在の日本よりもだいぶ進んだ国のように思える。
特に移民政策において。
1990年のスウェーデンは無制限に移民を受け入れていたらしい。
移民/外国人が増えていくと、とうぜん地元住人の中に不安や恐怖心がわきおこり、それに耐えられない人たちが移民排斥運動を始める。
『殺人者の顔』には移民にかんする問題がかなりページをさいて説明されている。
主人公のクルト・ヴァランダー自身も、移民に対する自身の偏見とたたかいながら暮らしている。
人種差別は悪だ。
でも外国人に対する根元的な恐怖心はたしかに存在する。
その相反する複雑な感情とどうやっておりあいをつければいいのか。
それは私たちの問いでもある。