(※以下ネタバレあり)
イギリスの小説などにはまってずっと読んでいるが、探求すればするほど面白い作品が奥からどんどん出てくる感じだ。
今回読んだ『クリスマスのフロスト』は、のちに大人気となるフロスト警部シリーズの1作目。
いままでにないめちゃくちゃなキャラクターなので新鮮味があり、文字どおり面白い。
フロストのだらしなさ、汚さ、駄目さ、下品さは群を抜いている。
日本でいえば落語の与太郎的な、読んでいる私たちの誰よりも駄目キャラで、だからこそ身がまえず安心して小説を読めるし、のんきで楽しい気持ちになれる。
どちらかといえばイギリス人には真面目な人が多い印象だったので、フロスト警部はしゃちこばった世界からの救いの神に見える。
警察の仕事の大半は書類仕事だという。
フロスト警部は書類仕事が大嫌いだ。
署長に直接指示されても無視したり、忘れたり。
フロスト警部は社会人として「大丈夫か?」というほど記憶力が悪い。
大事なことをメモしても、メモを見るのを忘れるのでメモしないレベル。
『クリスマスのフロスト』では地方都市のデントン市で8歳のトレーシーという女の子が行方不明になるところからストーリーが始まる。
トレーシーの母親ジョーン・アップヒルの職業は娼婦なので、限りなく深刻な状況なのにどこかなまめかしくセクシーな雰囲気がただよっている。
トレーシーの失踪について捜査する警官たち全員ジョーンが娼婦であることを了解している。
フロスト警部と行動をともにすることになった新米刑事のクライヴ(ロンドン警視長の甥)はジョーンの色香にクラクラだし、フロスト警部はお決まりの下品なジョークの連発だ。
エンターテイメント要素満載のフィクションらしいフィクションで良い。
お行儀の悪いイギリス人が見たければ『クリスマスのフロスト』がイチオシだ。