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イギリス

イギリスを知るためのおすすめ本

投稿日:2019年5月20日 更新日:

アメリカと距離をおくために

日本にとってアメリカは親のような存在に思えることがある。生まれたときからそばにいて、考え方、物の見方、センスなどにかんして絶え間なく影響を及ぼしてくる。だからアメリカ人が書いた本を読んだり、つくった映画を見ても、昔から接しているので違和感がない。

それはアメリカ以外の国民が書いた本、つくった映画などに接したときの違和感によって逆に認識される。
あまりなじみがない国民の初めて触れる感性、ちょっと奇妙なセンス、物語の流れや展開を受け入れがたい。
またアメリカ発のモノに触れると心地よく、気持ちよくなる。

自分の中にアメリカが住んでいるのは不思議なことだ。
それに気づいたとき、アメリカ的な感性を通さずに世界に向き合いたいと思った。

アメリカ同様英語を話す国民ではあるが、イギリスはアメリカとは似たところの少ない国である。外国を研究するにあたっては、英語圏の国のほうが幅広く情報を入手しやすいので、私はアメリカの影響力をふりはらうべくイギリス研究を始めることにした。

ポバティー・サファリ

スコットランドの貧困家庭出身のダレン・マクガーヴェイが描く貧困家庭の赤裸々な真実がここにある。

中・上流社会の物語に飽き飽きしている人におすすめ。

ポバティー・サファリ/ダレン・マクガーヴェイの詳しいレビュー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

なんどかレビューを書きなおしたが、正直この本は面白すぎて説明できない。

リアルタイムのイギリスのワーキングクラスのナマの生活を知りたいならぜひ読んでみてほしい。

Brexitに揺れるイギリスの地べたにはこんな生活が横たわっている。

ブレイディ少年が通う元底辺中学校の中だけでも現代的な最先端の問題が凝縮されている。

人種差別、富裕層と貧困層の格差、親の収入額に比例する子供の能力差、貧富の差をなんとか縮めようとする善意の大人たちの奮闘、その努力をあざ笑うかのように貧者を直撃する保守党の緊縮財政。

本書には数々の問題が列挙されているが、そうはいっても社会の根っこにいる子供たちは瑞々しく、たくましく、大人たちには解決できない入り組んだ問題を持ち前の柔軟性でクールに乗りきっていく。

絶対にほどけないと思っていたこんがらがった結び目がふわっとほどける瞬間のようなものがこの本には詰まっている。

多様性のメリットとデメリットを知りたい人、人種差別問題、国内の格差問題などの解決の糸口を見つけたい人にも読んでほしい一冊です。

■ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー – ブレイディ みかこ (新潮社)

花の命はノー・フューチャー

イギリスに興味がわいてもっと知りたいと思ったとき、本を読んだり映画を見たりする。けれど、作品中では中・上流階級の人たちが登場人物であることが多く、下流(?)階級は召使いとして黙々と働いているだけで、イギリスの一般庶民の日常生活とか、ふだん何を考えて生きているのか?といったことはうかがいしれない。

そんなときブレイディみかこ氏のエッセイを読むと、いちばん知りたい普通の人の暮らしが描かれていて満足する。

みかこ氏はイギリス南部の港町ブライトンで生活している。ダンプの運ちゃん&ライター/保育士の自称ワーキングクラス夫婦なのでその日常生活をとりまいているのもワーキングクラスな世界だ。

まるでブライトンを舞台に多民族な登場人物たちがいろんなはちゃめちゃをくりひろげるコメディドラマ。

そもそも彼女の連合いがアイルランド人だし、隣人も、街や旅先で会った変な人も、ホームレスも、友達も、世界各地から集まった役者のようだ。

電車が遅れる話、病気になって病院に行きたいけどぜんぜん予約がとれない話、ピストルズのジョン・ライドンが出演するテレビ番組の話、ブラジル人の親友とグチをこぼしあう話。ブライトンという街の特色、イギリス人とアイルランド人の違い、アイルランド人の長所・短所など、生活にもとづいた話題が満載だ。

イギリス人は日本人と違って徹底的に個人主義なので、家庭よりもまず自分の幸せを優先する。好きな人ができると家庭を壊してでも恋愛に走る。子連れでどんどん離婚&再婚する。意外といきあたりばったりだ。ただしワーキングクラスの人たちだ。

新聞やニュースにのらないイギリスネタがとても面白い。

■花の命はノー・フューチャー: DELUXE EDITION – ブレイディみかこ (ちくま文庫)

インドへの道

イギリスが誇る作家の一人E.M.フォースター(1879-1970)の代表作。1984年に映画化もされている。

たしかにこの作品はインドを植民地化した当事者であるイギリス人にしか書けない内容だ。

フォースターは実際に大英帝国支配下(1858-1947)のインドで暮らし、働き、インド人の友人もつくった。

『インドへの道』の最初に掲げられる献辞は「シエド・ロス・マスードと、われわれの17年間の友情にささぐ」となっている。

ちくま文庫の解説によると、このマスード氏はまるで小説中のアジズ医師を思わせるようなイスラム教徒のインド人で、職業は弁護士だったという。

『インドへの道』では、インドが支配者であるイギリス人の視点と、被支配者であるインド人の視点双方から描かれていて大変興味深い。

作者はイギリス人なのにインド人の心象風景をどうしてこれほど詳細に描写できるのだろうと不思議に思う。それは上記のマスード氏ほか、フォースタが現地で親交を結んだインド人の恩恵なのだ。

フォースターが実際に『インドへの道』を地で行ったというのは驚嘆に値する。

またそれは「(イギリス統治下のインドで)イギリス人とインド人は親交を結ぶことは可能か?」という問いへの答えにもなっている。

関連記事:インドへの道/E.M.フォースター

■インドへの道 – エドワード・モーガン フォースター (ちくま文庫)

少年キム

フォースターの『インドへの道』が好きな人にはあわせて読んでほしい、インドを舞台にしたイギリス少年の冒険譚。

基本のストーリーは、インド人同様に貧しい孤児として暮らす少年キムがチベット人のラマ僧と一緒に「矢の聖河」をさがして旅をする話。

それにイギリス人の大好きなスパイ要素が加わって、老人と少年の単調な北インドの旅をスリリングな活劇に変えていく。

親印派のイギリス人が描くインドは本当に生き生きとしていて多様で不思議で魅力的な国である。

『インドへの道』は大人向けの難解な小説だが、『少年キム』は少年の成長ストーリーなのでこちらのほうが楽しく読みやすいかも。

関連記事:少年キム/ラドヤード・キプリング

少年キム – ラドヤード・キプリング(ちくま文庫)

仕事と年齢にとらわれないイギリスの常識

イギリス人は散歩(ウォーキング)が好きだということを初めて知った。たしかにシャーロック・ホームズも、ミス・マープルも、街中や田舎をよく歩いている(イギリス発の作品には田舎が舞台になっているものが多い)。自転車に乗る習慣がないというのには驚いた(シャーロック・ホームズはときどき乗っているが)。

人々が安全に歩けるように車道と歩道が厳然と区分けされていたり、人通りがほとんどない田舎にも通行用の遊歩道が設置されていたりと、人間の安全と歩く権利が大変大事にされている国のようだ。

逆に、イギリス人が日本で暮らすと、歩いているときに車と接触して事故に遭いがちになる。

この本には日本を知るイギリス人、日本に住んだことのあるイギリス人の興味深い意見が多数掲載されている。

イギリス人は個人の権利意識が強く、物事を客観的にとらえることが得意で、問題の本質を冷静に見極めようとする基本姿勢がある。

それと比べると、日本人は個人の権利意識が希薄で、物事を主観的(かつ感情的)にとらえがちで、問題の(不都合な)本質を見て見ぬふりをするのが得意である。

と、比較研究できる。

年齢に対する意識もだいぶ違う。

イギリス人はそもそも年齢を問題にしない(年齢を確認し合う習慣がない)。だから年をとればとるほど自然に自由を謳歌するようになり、どんどん新しいことに挑戦する。年齢を数える意識がないので体力についていちいち心配しすぎない。前もって衰えることを想定せず、「疲れを感じたらそのとき休めばいい」という単純明快な発想。

イギリスの子供は幼いときから両親とは別々の寝室で寝かされる。自立することを早くから期待され、18歳で家を出る。

イギリスの映画を見て、多くの子供が親戚など、別の家に預けられて両親と別々に暮らすのが不思議だった。

夫婦の寝室に子供を加えると、夫婦関係が崩壊すると信じられている。

たしかに子供が生まれると、日本の夫婦は父と母に変わり、夫婦関係はじょじょに薄れていく傾向がある(果ては熟年離婚)。

イギリス人が生まれた土地に執着しないというのも意外だった。すごく引っ越しが好きで、旅先でその土地にインスピレーションを感じたらすぐに移りすんでしまう人が多い。

引っ越しとセットで、仕事にも執着しない。住環境が優先で、引っ越したら適当にできる仕事を見つけて食べていく。

イギリス人は、一見クールでそんなふうには見えないのだが、他人とのコミュニケーションが大好き。新たな土地で、新たな人たちと会話を楽しんだり、一緒に遊んだり、人間を興味深く眺め、自分と異なるタイプにも適応できる柔軟性がある。

キリスト教の精神が社会の根底にあり、「困ったときはお互いさま」を実践している。弱者を見捨てない。近くにいる誰かがボランティアで手をさしのべる。

まあ、『仕事と年齢にとらわれないイギリスの常識』が書かれたのが2002年と、だいぶ昔のことなので、今もその通りなのかはわからない。

 

■仕事と年齢にとらわれないイギリスの常識 – 井形 慶子(新潮文庫)

関連記事:血に問えば/イアン・ランキン

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椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。

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