クリスマスのフロスト/ウィングフィールド
投稿日:2021年1月13日 更新日:
(※以下ネタバレあり)
イギリスの小説などにはまってずっと読んでいるが、探求すればするほど面白い作品が奥からどんどん出てくる感じだ。
今回読んだ『クリスマスのフロスト』は、のちに大人気となるフロスト警部シリーズの1作目。
いままでにないめちゃくちゃなキャラクターなので新鮮味があり、文字どおり面白い。
フロストのだらしなさ、汚さ、駄目さ、下品さは群を抜いている。
日本でいえば落語の与太郎的な、読んでいる私たちの誰よりも駄目キャラで、だからこそ身がまえず安心して小説を読めるし、のんきで楽しい気持ちになれる。
どちらかといえばイギリス人には真面目な人が多い印象だったので、フロスト警部はしゃちこばった世界からの救いの神に見える。
警察の仕事の大半は書類仕事だという。
フロスト警部は書類仕事が大嫌いだ。
署長に直接指示されても無視したり、忘れたり。
フロスト警部は社会人として「大丈夫か?」というほど記憶力が悪い。
大事なことをメモしても、メモを見るのを忘れるのでメモしないレベル。
『クリスマスのフロスト』では地方都市のデントン市で8歳のトレーシーという女の子が行方不明になるところからストーリーが始まる。
トレーシーの母親ジョーン・アップヒルの職業は娼婦なので、限りなく深刻な状況なのにどこかなまめかしくセクシーな雰囲気がただよっている。
トレーシーの失踪について捜査する警官たち全員ジョーンが娼婦であることを了解している。
フロスト警部と行動をともにすることになった新米刑事のクライヴ(ロンドン警視長の甥)はジョーンの色香にクラクラだし、フロスト警部はお決まりの下品なジョークの連発だ。
エンターテイメント要素満載のフィクションらしいフィクションで良い。
お行儀の悪いイギリス人が見たければ『クリスマスのフロスト』がイチオシだ。
執筆者:椎名のらねこ
関連記事
-
-
(※ネタバレありです) 男性が女性のふりして会社勤めをするなんて、まるでドラマの設定みたいだ。 実際に3年もOLやっちゃった人が、タモリ倶楽部でもおなじみの能町みね子氏。 正式?には性同一性障害の人で …
-
-
著者のグレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれのアーティストだ。トランスヴェスタイト(女装家)として有名。テレビ番組の司会者。ロンドン芸術大学の総学長。大英帝国勲章受賞者でもある。 ※ELLEにプ …
-
-
※ネタバレありです ◎感想 著者の山田ルイ53世が同業者の芸人にいっさいおもねって(気に入られようとして)いないのがいい。 文中に細かく挿入される著者のツッコミが面白い。 的確な比喩・タトエに感心する …
- PREV
- 天才たちの日課 女性編/メイソン・カリー
- NEXT
- 口がすごく臭くなる夢