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創作の現場

天才たちの日課 女性編/メイソン・カリー

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図書館でたまたま手にとった一冊。

『天才たちの日課 女性編』には、それぞれの分野で活躍するアーティスト/クリエイター143人の日課が記されている。

特筆すべきは全員女性ということだ。

なぜなら前作『天才たちの日課ークリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』の登場人物は161人で、その中に女性はたった27人しかいなかったからだ。

世の中を見わたせば、どの職場でもだいたい男性ばかりが目立っている。

女性がいると思えば補佐役かお飾りの場合が多い。

あるいは特定ジャンルの仕事にかたまっているとか。

早く日本でも男女平等が実現すればいいと思う。

ともあれ、本書は『天才たちの日課 女性編』という題名だが、原題は”DAILY RITUALS Women at Work”で「天才」とはいってない。

実際には『アーティストの日課』『クリエイターの日課』という内容になっている。

日本でも有名な人としては、ココ・シャネル/フリーダ・カーロ/フランソワーズ・サガン/ミランダ・ジュライ/コレット/マレーネ・ディートリヒ/アリス・ウォーカー/ヴァージニア・ウルフ/スーザン・ソンタグ/シャーロット・ブロンテ/マーガレット・ミッチェル/タマラ・ド・レンピッカ他、彼女たちの生々しい声を聞くことができる。

たとえば映画化もされた『愛人 ラマン』の作者マルグリット・デュラスにとって小説を書くこととは・・・

手を打たないといけない危険な状況があって、私はそれになんとか対処しているだけ。なにかに支配されている感じ。書いているときの私はおびえている。・・・

女性には妊娠/出産機能があるので、男性の人生とは異なる日々を生きる人もいる。

それはたとえアーティストでもクリエイターでもそうで、妊娠/出産したら子どもの生活と創作活動の折り合いをつけなければならない。

2つを同時におこなうのは困難なので、それぞれが独自の調整方法を編み出していくことになる。

そしてそのやり方、多くの試行錯誤の過程と結果の一端が本書に記録されている。

夫(家族)が創作活動に協力的な人もそうでない人もいる。創作活動に集中するために子どもを残して離婚した人もいる。

結局ずっと独りで生きた人もいる。

イギリス人作家ドリス・レッシングには息子がいるが、息子を学校に送り届けてから彼女の作家としての本格的な一日が始まる。

これを手に入れなくちゃとか、あれをやらなくちゃとかいう熱に浮かされたような欲求―私はそれを主婦病と呼んでいるが、・・・は、しっかりと抑えて、書くために必要な、起伏のない、ぼんやりした状態にならなければいけなかった。ときには数分間眠ることで、そんな状態になれたこともある。

人間は全員違っているので、物事のやり方も人間の数だけ存在する。

でも自分と似たタイプの人のやり方を参考に、新たなアイデアを練るのもいい。

この本は世界中のアーティスト/クリエイターのコンパクトにまとまった知恵の宝庫ともいえるのだ。

また、自分自身がアーティスト/クリエイターの人なら、普段は周りに同様の仲間や理解者がいなくて孤独を感じていると思うが、この本の中には143人の仲間/たぶん理解者が存在するので、かたわらに置いて、孤独を感じたときに読むと勇気づけられると思う。

仕事のジャンルはさまざまで、作家/詩人/劇作家/映画監督/ダンサー/女優/歌手/作曲家/写真家/画家/彫刻家/建築家/服飾デザイナー/装飾デザイナー/インテリアデザイナー/社会運動家など、それ以外にもサロン主宰者とか、自分がそう決めて名のれば出来あがりみたいな雰囲気がある。

でも実際、自分の心に従って生きるのが彼女たちの基本姿勢のようだ。

国籍は、アメリカ/カナダ/ドイツ/ベネズエラ/ロシア/デンマーク/フランス/アイルランド/イギリス/ メキシコ/イタリア/ジャマイカ/チリ/ニュージーランド生まれなど、世界中に散らばっている。

だが、著者がアメリカ人のせいか、他の理由でか、アメリカ人アーティスト/クリエイターの掲載数が多いようだ。

日本からは草間彌生が「芸術家」としてただひとり参加している。

創作活動や女性の自由な生き方に興味のある人におすすめ。

著者メイソン・カリーのウェブサイト(写真付/英語)
https://masoncurrey.com/bio-contact

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