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イギリス

自然を取り戻すためのおすすめ本

投稿日:2020年8月15日 更新日:

1. 『英国貴族、領地を野生に戻す』(イザベラ・トゥリー著)

『Wilding(野生化)』が『英国貴族、領地を野生に戻す』の原題だ。

場所はイギリスの南東部ウェストサセックスにあるクネップという広大な農地。

粘土質のこの土地は本来農業に向かないが、食糧難に対処するため国によって農地開墾が推奨され、長年無理やり農地として利用されてきた。

だが、今や食糧難は遠のいた。

現代の領主が農業をやめたところから、土地の新たな歴史が始まった。

人が実際に知る自然の姿というのはせいぜい50年から100年前の状態にすぎない。

それより前の自然の姿がクネップの土地でダイナミックによみがえる様子が詳述されている。

この本を読む前は自然保護にそれほど興味がなかったのに、読んだらいきなり自然を保護したくなった。それほどのインパクト。

内容が濃くてどうしてもまとめられなかったので、Amazonの紹介文を引用する。

出版社からのコメント
ロンドン中心部からわずか70キロのところにある1400ヘクタールの土地で、
粘土質の土壌に苦労しながらも農業と酪農を続けていた著者夫婦は、
増え続ける経費、グローバル化による競争の激化、農作物の価格暴落などで
赤字続きの農業経営から手を引くことを決める。

そして、耕作をやめた翌年、かつての農地は生き物であふれかえるようになる。
ハチやチョウが飛び交い、バッタが跳ね、鳥たちはさえずり、草花が生い茂る。
劇的な変化を目の当たりにした著者は、「自分たちは何もせず、自然のなすがままに任せる」考えのもと、
この土地にかつていたはずの、草食動物の導入に踏み切る。
シカにはじまり、野生種に近いウシ、ウマ、ブタが領地内で暮らすようになると、
絶滅危惧種の鳥やチョウがつぎつぎに姿を表し、研究者たちを驚かせた。

近隣住民との軋轢、一向に進まない行政とのやりとりなどを乗り越え、
動植物の研究者からの協力や、オランダやドイツでの先進的な取り組みに触発され、
著者の野心はますます大きくなっていく。
自らの地所にとどまらず、イギリス諸島の一部を野生の状態に復元して、
いつの日か、ヘラジカやオオカミが再びこの地に棲めるようにしたい……。

著者たちの「自然に主導権を手渡すことによって、以前の状態を復元させる」再野生化、環境保護のやり方は、
これまでの、人間が主体になって自然を管理する自然保護を考えなおす時にきていることを、まざまざと教えてくれる。

■英国貴族、領地を野生に戻す―野生動物の復活と自然の大遷移 – イザベラ・トゥリー■

2. 『アファンの森の物語』(C.W.ニコル著)

『英国貴族、領地を野生に戻す』を読んで、この機会にもっと自然に関する本を読みたいと思った。

人間も自然の一部なので、読書を通して自然を感じること、自然の中に自分がいる様子を想像することは単純に気持ちいいのだ。

私のように地方の田舎で育った人ならとくにそうだろう。体が自然の感覚を知っていて、水や木や風のにおいを瞬時に思い出すことができる。

だから、本を読むだけで簡単に気持ちよくなれる。現実の苦労を忘れてリラックスできる。

C.W.ニコル氏はイギリスのウェールズ地方出身者。

自然に対する感受性、自然を愛する能力が非常に高い人。

『アファンの森の物語』には、ニコル氏の原点が記されている。

故郷ウェールズの話、北極探検に行ったり、アフリカのエチオピアで国立公園を作る仕事をしたり、日本の空手道場にかよったり、日本の自然に魅せられて、長野県の黒姫に根を下ろすまでのあれこれ・・・

すごく素直な人柄で、言葉が率直なのでわかりやすい。

なにより自然の美しさや素晴らしさ、動物に対する深い知識、あふれんばかりの愛情について伝えるパワーがすごい。

ニコル氏のまわりの自然を愛し、共に保護活動をしている友人・知人たちとの親密さや互いを尊敬する気持ちもあまり身近では見られない貴重な人間関係のように思う。

自然保護活動というのは個人で行うことが難しいので、ニコル氏のアファンの森の活動に寄付することにより微力ながら参加したいと思う。

■アファンの森の物語 – C・Wニコル (著)■

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椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。

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