なんとか自分を元気にする方法

僕たちのカラフルな毎日(南和行著)

僕たちのカラフルな毎日

南和行氏と吉田昌史氏を知ったきっかけ

南和行&吉田昌史のゲイカップルについて知ったのは2018年10月1日の朝日新聞でだった。

彼らの日常生活を追ったドキュメンタリー映画『愛と法』の紹介記事を読んで、渋谷のユーロスペースに映画を見に行った(『愛と法』の感想)。

それから南和行氏が書いた『同性婚 私たち弁護士夫夫(ふうふ)です』も買って読んだ(『同性婚』の感想)。

また先日、朝日新聞一面の「折々のことば」に『僕たちのカラフルな毎日』からの引用文が2日間にわたって掲載された。この本のことは知らなかったし、Amazonで調べてみたら面白そうだったので、さっそく買って読んだ。

私はすでに2人のファンになっている。どちらか片方じゃなくて、あくまでゲイカップルとしての2人の存在が素敵すぎるのだ。その生き方を尊敬している。

もし自分がゲイに生まれていたら

もし自分がゲイに生まれていたら、子供のころから他人と自分は根本的な何かが違うという違和感を抱き、少数派である自分はおかしいと思い、それが周りにバレないように必死で隠そうとするだろう。好きな人ができても、その人が異性愛者だったら、絶対に恋は成就しない。そもそも異性愛者に比べて同性愛者の数は限りなく少ないのだ(7-8%くらい?)。年ごろになって、友達が結婚して、子供をつくって、順調にハッピーファミリー化する中で、自分だけ永遠に一人ぼっちで、親からはそろそろ結婚しろという圧力や攻撃を受けたり、それを嘘の言い訳でごまかして、やりすごしながら年をとっていく。不幸な少数派として・・。いや、年をとる以前に、人生の悩み多き20歳前後に、絶望して自滅しているかもしれない(ゲイでなくても、これまで何十回消えてなくなりたいと思ったことか!気が狂うほど声を出さずに泣き叫んだことか!)。

「もし自分がゲイだったら?」と、想像すると、あまり素敵な一生は思い描けない。実際はゲイでないけど、やっぱり自分も自分の親を愛せないマイノリティーで、世の中に対して大っぴらにできない気持ちを抱いていることに対する罪悪感がある。マイノリティーには各種あるが、マイノリティー同士には共感しあえる部分がある。というか、日本各種のマイノリティーを集めたら、実は人口の50%くらいを占めるんじゃないだろうか? 残りの50%は家のCMに登場するような夫婦と子供1人以上の組み合わせの理想的なハッピーファミリーかといえば、現実にはCMのようなファミリーはほとんどしなさそうに思える。夫婦と子供がいても、かならず家族にはいろんな問題が発生するものだ。

そうはいっても、マイノリティーは本当の自分の姿を他人に対して明らかにできないという点で、普通の人よりも幸せになりにくい。自分を偽って生きるのはそれ自体がとても苦しい。そして大きな問題は、もし普通の人とは異なる点(欠点?)が明らかになると、普通の人たちがそれを修正して、自分たちと同じにしようとし始めることだ。修正は無理なので、そんなふうに強要されることはとても苦しい。

私の場合は実の親を愛せないながらも、異性婚をして実家から離れた場所で暮らし始めたとき、幸せだった。でも今度は双方の親からの「子供を産め」攻撃が始まり何年も悩まされた。実の親を愛せない私は自分の子供も欲しくないのだった。夫は私の気持ちに理解を示しつつも心の底では子供を望んでいたので、一人で「子供は産まない」と抵抗するのは死闘だった。結婚して、規定のハッピーファミリーの形から外れると、なぜか周りから攻撃を受けやすくなってしまうのだ。もともとハッピーファミリーの圏外にいて孤独なのに、圏外にいることをハッピーファミリーの面々からさらに攻撃されるという二重苦にさらされる。

マイノリティーは自分の異質な点が普通の人から攻撃されやすいことを知っているので隠そうとする。だからこそ、ゲイであるという事実を家族にカミングアウトして、なおかつ同性婚までして、世間に自分たちの存在を明らかにしてしまったこの2人は本当に勇敢で、稀有なカップルだと思う。

あらすじ&感想

大阪の弁護士夫夫、南和行氏と吉田昌史氏の出会いから結婚までのなりゆきや日常生活がかなりセキララに書かれている。

大学院生のときに2人が出会えたというのはとてもラッキーで、京大にゲイ専門のインターネットの掲示板があったというのがそれだけでも「進んでる!」と驚いた(南氏が主催していたという・・)。

2人が恋人同士になるまでの過程は異性カップルの場合とあまり変わらない。

ただ異性カップルだと、相手がイヤになれば「別の人をさがそう」とあっさり見切ってしまうが、同性カップルだとなかなか適切な相手を見つけるのが難しいので、そのぶん相手に対してやさしく忍耐強いのかもしれないと思った。

ゲイカップルというテーマ以外は、よく考えれば誰もが直面する人生の問題が素直に書かれている。それぞれの家族との関係、就職活動、希望と挫折、人生の停滞期、弁護士になるまでの勉強と我慢の時代、弁護士という仕事の内容など。

『愛と法』の内容と重なっている部分も多少はあるけれども、『僕たちのカラフルな毎日』を読んで元気がでたし、笑ったし、感動したし、ハッピーになれた。この本は、同性婚をして、弁護士として活動しているゲイカップルが書いた本ということで、今ゲイであることを悩んでいる若い人の希望や救いにもなると思う。

文章が明るく、読みやすくて、楽しいので、日常の憂さをはらす気晴らしの一冊としてもおすすめ。ゲイとかゲイでないとか関係なく、読んだ人はこの2人を好きになるだろう。そしてゲイに対する見方が変わるかも。こういう人たちが存在していることがとてもうれしい。

「多様性」について

 
多様性というと、国際社会に通じるパスポートみたいなイメージを思い浮かべていた
 
でも、ある日ふと思った。
多様性って、そんなキラキラした魅力的なものではないのではないか?
 
たとえば日常生活を送っていて、周りに嫌いな人間、苦手な人間、根本的に考え方の異なる人間が現れることがある。
 
そういった自分とは相性の悪い、異質な人間の存在価値を認めて、社会で共存することが多様性の実際なのではないか?
だとしたら、あまり明るく愉快なものではない。忍耐力や寛容の心が要求される。
 
でも、自分自身も異物だという意識があるので、自分の他人とは異なる部分をそのまま社会に黙認してほしい、強制的に修正せずに、そのままの自分でいさせてほしいと思う。それも多様性を受け入れてほしいという願いで、多様性は国際的で、先進的で、スマートなものではなく、案外原始的で、基本的で、どろどろしたものだと思う。自分も日々試されている。
 

『僕たちのカラフルな毎日~弁護士夫夫の波瀾万丈奮闘記~』のAmazon商品ページ(単行本)

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