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僕が夫に出会うまで/七崎良輔

投稿日:2020年8月31日 更新日:

苦しみを隠すと人生が先に進まない

七崎良輔著『僕が夫に出会うまで』は、図書館で西加奈子のエッセイを選んでいるときに隣りにあり目についたので一緒に借りた。

以前、南和行著『僕たちのカラフルな毎日』でゲイ夫夫の日常を知った。

今回のゲイ夫夫は私が具体的に知る2組目のカップルだ。

日本でゲイカップルに対する差別というのはいまだ激しいものだと思うが、少しでも興味をもってゲイカップルについて書かれた本を読めば「なーんだ、別になにも特別なことはない」と、逆にがっかりするくらいそこにはありきたりな日常が描かれている。

ゲイに対して異常な反応を見せているのは世間の一部の人だけであって、当人はごく普通に生きているだけなのだ。

だが、ゲイに生まれると日本の社会では生きづらい。

他の男性と違う部分が攻撃対象となる。

でも、違うことを隠そうとすると本人がとても苦しくなるので、いちばん楽な生き方はやはり七崎良輔氏のようにありのままの自分をさらけだすことなのだろうと思う。

また七崎氏のように、本人は隠しているつもりでも敏感な周りの人間は違いをかぎつけてしまうので、隠すとかえって変な感じになるということもある。

実際に、この本に出てくる七崎氏の昔の彼氏たちの中で、家族や友人にゲイであることを隠している人たちは、精神的に追いつめられ、おかしくなってしまっている。自滅の道をたどっている。

ゲイでなくても、自分の苦しみを一人でずっと隠しとおすのは辛い。

毎日その悩みが前に立ちふさがり、そこをぐるぐる回るばかりで、その先には一歩も進めなくなる。

これは特に若いころ誰でも経験する人生の壁だと思う。

私も自分の苦しさを両親に伝え、秘密にしていた思いをカミングアウトしてから人生が生きやすい方向に変わっていった実感がある。

そしていったん自分に正直に生き始めると、過去の苦しみはだんだん記憶の彼方に薄れ、ついには「そんなこともあったっけ?」くらいの位置づけになる。

とはいえ、ゲイに生まれて悩まない人はいないと思うので、なるべく早くゲイの先輩の生き方を知って、それを参考に人生を切りひらいていってほしい。

ゲイの恋愛話の詳細は異性愛の流れとほとんど変わらない。甘酸っぱい青春物語だ。

重要なのはカミングアウトのくだりで、いちばん読みごたえがある。

面白いのは、ゲイ当人が予想する周りの人たちのカミングアウトへの反応がことごとく当たらないということだ。

特に七崎良輔氏の場合は、母親と父親で反応が予想と真逆だったのが興味深かった。

人間は複雑な生き物で、決して予想どおりの行動はとらない。

他人の行動を予想して行動するとまったく想像もできない反応がかえってきたという経験は誰にでもあるのではないだろうか?

だから他人の反応を自分の頭の中だけで決めつけないほうがいいのだ。

そして『僕が夫に出会うまで』を読めばわかるように、世の中ゲイに理解のない人たちばかりではない。

日本でもゲイに対する理解は年々深まっていると思う。

世の中、無理解な人たちばかりではない。

サービス業で接客していると、人間の大半がいい人であることがわかって驚かされる。

その辺を歩いている人たちの顔を見ればみんなしかめっ面で怖い人に見えるが、ひと言でも会話して笑顔がのぞくと印象は180度変わる。

だから他人とのコミュニケーションに笑顔は大事だと思う。

あらすじ

(※ネタバレありです)

『僕が夫に出会うまで』の内容を最後にまとめると・・・

七崎良輔氏は、1987年に北海道で生まれた。

両親はバリバリの体育会系カップルだ。特に父親は大変男臭いタイプ。

一方、長男の良輔氏は、小学生の頃から同級生に「オカマ」と呼ばれてしまうような女の子っぽい男の子だった。

中学生時代も「オカマ」と呼ばれた。

当人はまだ自分がゲイであるとは気づいていない。

世間一般の風習にしたがって女子ともつき合ってみるが、本当に心も体もトキメクのは男子に対してだった。

所属する生徒会室で出会った男子に恋をして、女子に奪われ、失恋して、ヤキモチを焼いて、八つ当たりして・・・

高校時代も「オカマ」と呼ばれた。

座り方とかがかわいかったらしい。

高校では男女の友達がたくさんできた。

また男子に恋をしたが、彼は他の女子に恋をしている。ヤキモチを焼けども同性愛はなかなか成就しない。

高校卒業後、東京の映画の専門学校に進学した。

実家を離れて男子寮生活を始めたので、一人の部屋でゲイの出会い系サイトをのぞいてみた。

さっそくゲイのおじさんの家に誘われ、初体験をした。

それがきっかけで男子寮でもいくつかその場限りの関係を結んだ。1年で寮を出た。

専門学校2年目の秋に一人暮らしのアパートで、悩みぬいたすえ、ついに自分が同性愛者であることをまず自分に認めた。

これは結婚とか、普通の人生を生きることをあきらめることであった。

その後、友達の女子に会って失恋話を聞いているうちにムカついて、ムカついた流れで彼女にゲイであることを衝動的にカミングアウトしてしまった。

友達は七崎氏の辛さをしっかりと受けとめてくれた。

それが救いとなり友達に次々とカミングアウトしていった。

20歳の時、母親にカミングアウトした。

いつも自分に優しかった母だが、ゲイである件は受け入れられないとはっきり言われた。

21歳の時、ゲイの集まりに参加して、彼氏ができた。数年間つき合って、別れた。

その後もいろんな男性と出会ったり、つき合ったり、別れたりして、最終的に運命の人に出会った。

2016年、29歳の時に築地本願寺で結婚式(パートナーシップ仏前奉告式)をあげた。

現在も幸せに暮らしていると思われる。

関連記事:僕たちのカラフルな毎日(南和行著)

関連記事:『同性婚』by南和行

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椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。

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