なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

LGBTQ+ 映画・ドラマ

『愛と法』

投稿日:2018年10月26日 更新日:

(※ネタバレありです)

◎はじめに

10/1の朝日新聞の生活面にドキュメンタリー映画『愛と法』が紹介されていた。
欧州生活の長い戸田ひかる監督が「日本社会で感じる違和感や息苦しさといった「見えにくい現実」を、同性愛者のカップルを通じて目に見えるようにしたいと思った」とコメントしていた。
「ぜったい見たい」と思って、渋谷のユーロスペースに見にいった。

◎あらすじ・感想

日本で同性のカップルが結婚した。
その日常生活も含めて撮影したドキュメンタリー映画だ。

私の周りにはLGBTであることを表明している人は一人もいない。
だから当事者の日常生活に興味があった。

どちらかといえば、一つ年上のカズがリード役みたいだ(1976年生まれ)。
彼は、小学生の頃から自分が同性愛者であるという自覚がうっすらあったらしい。

たしかに自分の思想傾向というか、人間のタイプは、小学生の時にすでに決まっている気はする。
私は小学生の頃から、大人の言うことに疑問を抱きがちな反抗的な子供だった。
私自身の当時からの問題は母親をどうしても愛せないことだった(のちに3歳の時にプチ虐待されていたことを母親から知らされた。現在もほとんど交流がない)。
その点で自分は他の子供と違うおかしな人間だとずっと思いながら暮らしてきた。

カズとフミは京大大学院時代に京大の同性愛者の掲示板のオフ会で出会った(カズが掲示板の管理人をしていた)。

その後の流れは異性カップルと同じだと思われるが、やはり同性という縛りは厳しく、異性カップルよりも恋愛の進度が大幅に遅いような気がする。

フミはとても繊細で傷つきやすい人のように見える。
カズと出会う前にたくさんの悲しい経験をしてきた人に思える。
自分自身に近いキャラのような気がして共感できた。
フミがカズと知り合って、一緒に暮らして、ホッとできる居場所が見つかって本当に良かったと思う。

カズ(南和行)とフミ(吉田昌史)のカップルが二人とも弁護士というのがすごい。
なぜ二人とも弁護士なのかというと、フミはもともと京大法学部の大学院の研究者コースの学生で、途中から大学院を休学し司法試験の受験勉強をして弁護士を目指すようになった。
一方、カズは京大農学部の大学院生で法律の勉強はしていなかった。
だが、父親が弁護士だったのだ。
弁護士に対する憧れがあって、フミと一緒に司法試験の受験勉強をして弁護士を目指すことにしたというのだ。
最初にフミが、3年後にカズも司法試験に合格した(以上の内容はカズの『同性婚』という新書に書いてある)。

映画に登場する人たちは皆、人権のために戦っている。
ろくでなし子の話題性バツグンの裁判、君が代の不起立裁判、無戸籍者の戸籍をめぐる裁判など・・・。
各裁判は個人戦のように見えるが、実は私たち皆のために戦ってくれていると思う。

カズ&フミの戦い(人生)は象徴的だ。
実生活も依頼者の裁判も人権をめぐる問題に日々さらされている。

テーマは違っても、マイノリティーの悲しみには似たパターンがある。
自身の問題を誰にも理解されない苦しさ。誰にも言えない苦しさ。

映画にも出てきたが、自分が同性愛者であることを苦にして人生を棒にふる若者が実際に存在する。
彼ら/彼女らが『愛と法』を見たら、「自分もこんなふうに生きられる」「こんなふうに結婚できる」と知り、どんなに勇気づけられることだろうか。
この映画の存在意義はとても大きいと思う。

◎『同性婚--私たち弁護士夫夫です』

映画を見終わった足でそばの東急に立ち寄り、丸善でカズこと南和行著『同性婚--私たち弁護士夫夫です』(祥伝社新書)を買って帰った。

残念ながら映画館のお客さんはとても少なかったが、『同性婚』の本は新書コーナーに目立つように平積みしてあったのでうれしかった。

マジョリティーにマイノリティーの問題に目を向けて理解しろというのはなかなか難しい。
彼ら/彼女らはマイノリティーとはまた別の問題に目を向けて日々解決すべく努力しているのだから。

でも、さまざまな問題に苦しんでいるマイノリティー同士が、一般には理解されにくい互いの問題を理解し合うことはそれほど難しくない。
映画の中で同性愛者の弁護士であるカズとフミが依頼者であるろくでなし子氏、辻谷氏、山本氏が抱くマイノリティーならではの問題をスッと自然に理解して共感できるように・・・。

同性愛者にかぎらず日本のマイノリティーを集めたら人口の何割くらいになるのだろうか?
実は4割くらいに達するのだろうか、可視化しさえすれば?

マイノリティーはマイノリティー同士でつながることができる。
『愛と法』はそれを教えてくれる。

映画『愛と法』公式サイト

関連記事:裁判傍聴はリアル人間劇

関連記事:初傍聴裁判の判決を聞きのがした

-LGBTQ+, 映画・ドラマ

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

ふたりのベロニカ

ふたりのベロニカ/キェシロフスキ

(※ネタバレありです) 目次『ふたりのベロニカ』のあらすじ『ふたりのベロニカ』の受賞歴クシシュトフ・キェシロフスキ監督『ふたりのベロニカ』の音楽『ふたりのベロニカ』の感想 『ふたりのベロニカ』のあらす …

男らしさの終焉

男らしさの終焉/グレイソン・ペリー

著者のグレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれのアーティストだ。トランスヴェスタイト(女装家)として有名。テレビ番組の司会者。ロンドン芸術大学の総学長。大英帝国勲章受賞者でもある。 ※ELLEにプ …

夜の来訪者

ここ数年イギリスブームが来てて、夫が契約しているアマゾンプライムでもイギリスのドラマばかり選んで見ている。 だいたい「BBC ドラマ」と入れて検索するといくつかヒットする。 先日、異色の社会派ドラマを …

リンドグレーン

リンドグレーン

リンドグレーン (※ネタバレありです) 目次あらすじ感想 あらすじ スウェーデンの人気作家アストリッド・リンドグレーン(1907~2002)の自伝的映画を神保町の岩波ホールに見にいった。 アストリッド …

世界一周ホモのたび/サムソン高橋/熊田プウ助

目次『世界一周ホモのたび』を読んだ『世界一周ホモのたびDX』を読んだ『世界一周ホモのたび祭』を読んだ『世界一周ホモのたび狂』を読んだ『世界一周ホモのたび結』を読んだ 『世界一周ホモのたび』を読んだ 能 …




 

椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。

お問い合わせ先:siinanoraneko@gmail.com