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試食販売

スーパーで神様に救われた

投稿日:2018年10月16日 更新日:

試食販売の事前研修

試食販売はどれも重要なものだが、この週末2日間の試食販売はその中でも特に重要なものだった。
実施3日前にメーカーの本社まで出向き2時間の事前研修を受けたのだ。担当者は研修を受けにきた私たち販売員を最上級の礼をもって扱ってくれた。
人間同士の間では研修資料には記されないこの「販売員に礼を尽くす」というポイントが一番のインセンティブになることがある。
今回の試食販売は商品の質が良く、しかも増量キャンペーン中ということでさらにやる気が高まり、当日が楽しみになった。

ただ一点、メーカーからの「お願い」が私たち販売員の気分をかなり盛り下げた。
店舗に送ったポスターやポールなどの販促物を試食販売終了後に送り返してほしいというのだ。
使用機材(レンジなど)の送り返しは試食販売の内容によって時々発生するのだが、まずこの作業をよろこぶ販売はいないと思う。
やれやれやっと仕事が終わり、通常の片づけ作業、試食品の買い取りやゴミ捨てなどの片づけだけでもスーパーの広いバックヤードをウロウロしているとあっという間に20~30分が経過してしまう。
これに機材の返送が加わると、梱包とサービスカウンターなどでの手続きにプラス15分は見ておいたほうがいい。
なのでこの「お願い」を聞いたとき、私たちの表情は曇り、心の中で「イヤ~!」と叫んだ。

資材の返送作業

ともあれ、スーパーの部門の責任者から「たくさん売ってくれてありがとう!」といわれて2日間の販売が終わり、バックヤードで販促物をすばやく梱包、研修のときに記入した2枚の伝票(なんと今回はまさかの2個口発送なのだ)を貼り、ずり落ちる大きな荷物を無理やり抱きしめて、サービスカウンター(今回は銘店コーナーが受付だった)までななめ歩き。
2人の女性がカウンターから出て荷物を引き取ってくれた。
1枚の伝票の控えを受け取ってホッとしたところで問題発生。

2人のうち主に対応してくれていたベテランの方の女性(Nさん)が突然あることに思い至って荷物のサイズをメジャーで測りはじめたのだ。
宅急便の受付は160cmまでで、それ以上の大きさの荷物は引越し扱いになるという話。
本日の集荷受付は終了しており、明日受付不可となったときに当事者である私はいない。
そうすると困るので、「いまヤマトに問い合わせてみる」と、Nさんは積極的に動いてくれた。
この荷物はなんと両方160cm超えだったのだ。

余談だが、スーパーでこのように見も知らないパートさんが私たちのために無償で働いてくれることはとても少ない。「自分でなんとかして」と言われるのが当たり前なのだ。
だからすでに疲労困憊している私は揺りかごに揺られるようにすべてをNさんにゆだねてしまった。

結果、直接ヤマトのセンター持ち込めばOKというのでNさんが勤務終了後車で少し寄り道してヤマトに運んでくれるという。
伝票が変わるので、それも記入してくれるという。
当然のように、「そうしないとあなたはとても困るでしょう」と言って、Nさんは嫌な顔ひとつしないのだ。
こんな人がいるだろうか?
いや、いない。
だから私はNさんは人間の姿をした神様なのだと思った。

私は無宗教だか、宗教には興味を抱いている。それで時々関係書も読む。
例えばキリスト教で神様は決して人間の前に姿は現さない。だが、その存在は当然キリスト教徒には信じられており、様々な現象や他の人間の姿を借りて私たちにメッセージを届けてくるのだという(先日アメリカのドラマ『ホワイトハウス』のDVDでそのことを学んだ)。
まさにその現象がいま私の前に現れているのだと驚きながら、私はNさんの厚意にべったり甘えた。
お礼にできることといえば、スーパーでお菓子を買って手渡すことくらいだった、最大級の謝意を込めて。
他の販売員は一体どうしたのだろうかと考えながら・・・。

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椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。