浅草演芸ホールで落語を見た
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落語のすすめ
東京に住むようになって、落語のおもしろさを知り、寄席に行くようになってはや数年・・・
コロナで途絶えていた寄席落語がじょじょに復活している。
コロナ自粛中はオンラインでも聞いたが、やっぱり寄席の独特の雰囲気は捨てがたい。
売れっ子の落語家がでる寄席は満席になり入れない可能性があるので、確実に入場できそうな浅草演芸ホールに足をむけた。
人生で初めて寄席で落語を聞いたときは期待が大きすぎて『意外とおもしろくない』と思ったが、その後もYouTubeで有名な話(落語)をいろいろ聞いて、お気に入りの話と落語家を見つけて、同じ話を何10回も繰り返し聞いているうちに落語のおもしろさがわかってきた。
江戸情緒や江戸っ子の独特の感性は、慣れるととても心地よく、ユーモアをくみとれるようになってくる。
落語を楽しむコツの一つに「慣れ」があると思う。
最初に聞き始めたときは、慣れないので落語言葉もよく聞きとれないし、肝心の落ちもピンとこない。
落語には古典という定番のストーリーがあり、落ち(結末)も決まっている。
話の筋や結末が前もってわかっていても、聞くたびに笑えるのが落語の不思議な強みで、だからインターネットでいろんな落語を先に読んだり聞いたりしてストーリーと結末を理解するというのも一つの楽しみかただ。
映画のネタバレとはまったく異なる世界感が落語にはあり、そこが他とは取り替え不可能な落語の魅力である。
10月上席の浅草演芸ホール
コロナ以降、初めて寄席に行った。
コロナ前はどの寄席も大盛況で入場できないこともあった。
私は落語ブームのまっただなかに落語にはまってしまったのだった。
炎天下、開場まで1時間も一人で行列に並んだことさえあった。
そのうち寄席が混み過ぎるので疲れてあまり行かなくなった。
だから今は大チャンスである。
実際、浅草演芸ホールには20人くらいしかお客さんがいなかった。
予想したよりもずっと少なかった。
こうなると演者も、聞くほうもなかなか大変だ。
どうしても場の空気があたたまりにくくなる。
会場がしんとしていて緊張感がただよっている。
それでも入場して席についたときにはけっこう笑いがおこっていたので『優しいお客さんだな』という第一印象だった。
その後も、少ない人数のわりには会場は笑いに包まれていたほうだと思う。
むしろ落語家のほうがちょっとたじろいで、テンパっていたのではないか?
若い落語家ほど異常な早口で、話についていくのが大変なので笑うどころではない。
見ていて気の毒になってくる。なぜそんなマシンガントークで落語を?
最近の落語家はどんどん高速化しているのでは? 寄席の外の世界同様に。
寄席でゆったり肩の力を抜きたい人間にとっては落語の高速化は残念な現象だ。
間がないと笑うタイミングを失ってしまうし・・・
その点、なぞかけのねづっちのペースは昔風のゆったりしたもので快適だった。
なぞかけの技術力の高さやおもしろさが群を抜いて素晴らしいのはもちろんのこと。
ねづっちを寄席で生で見たのは2度目だが、この日の寿司屋で奥さんの誕生祝いをしたネタは秀逸だった。
なぞかけ素人の奥さんと玄人のねづっちがなぞをかけあうのがおもしろすぎるし、しばしば奥さんがねづっちに逆ギレする場面が最高に愉快だ。
さすがのねづっちも、広い浅草演芸ホールに閑散と座る20人強のお客さんを見たときはたじろいだようだったが、お客さんの反応や空気を読んでどんどん態勢をたてなおし、お客さんの気持ちをどんどん引きつけてより大きな笑いに変えていき、きれいなフィナーレにもちこんだところは『プロだな〜〜』と感動した。
他の落語家やイロモノさん(落語以外の出し物をする芸人)もプロなのだが、お客さんが少なかったり反応が悪いと変にペースを乱していつもの調子を出せなかったり、『今日はダメだ』とすぐにあきらめて仕事を投げてしまう人がいる。
そこが同じプロでも実力の多寡、人気の有無を分ける境ではないだろうか。
これは芸事に限ったことではなく、どの仕事でも同じだと思う。
うまくいかないときにすぐにあきらめてしまったら、そこから上へのステップアップはのぞめないのだ。
小痴楽は「落語家から学べることはなにもない」といっていた。
が、個人の芸人から学ぶことは少なくても、寄席に4時間以上座って、いろんな人たちを眺め、いろんな話を聞いていれば、なにも心に響かないということはないようだ。
見た中でおもしろかったネタ
・寿司屋で奥さんの誕生祝いをするなぞかけ
・芋俵(とロボット掃除機のまくら)
・看板のピン
・三人旅
・長唄
・講談
・地獄八景
・馬大家
自分が好きな落語
・芝浜/青菜(小三治)
・猫の災難(小さん)
・片棒(市馬)
・長短
・七段目など
落語関連のおすすめドラマ/漫画
・タイガー&ドラゴン(テレビドラマ)
・昭和元禄落語心中(雲田はるこの漫画)
執筆者:椎名のらねこ
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