なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

三味線ざんまい/群ようこ

投稿日:2021年7月23日 更新日:

群ようこが三味線を習っていたとは知らなかった。

この三味線のレッスンがとても難しく大変そうだ。三味線は弦がたった3本しかないにもかかわらず。

私は飽きっぽく根気がないので楽器類の習得は最初からあきらめているが、夫は群ようこ同様着物とか和物が好きで、「三味線を弾いてみたい」と言っていたことがある。

だから三味線のレッスンはまったくの他人事ではなく、『もし夫が三味線を習ったらこんな目にあう』と、リアルに想像しながら『三味線ざんまい』を読んだ。

三味線というのは三味線だけで独立して存在しておらず、あくまで小唄の伴奏者という位置づけらしい。

そして小唄の伴奏をするためには、三味線奏者も小唄を覚えなければならない。

趣味の習い事なのだから片方だけでもよさそうなものだが、昔ながらの芸事なので自己都合の簡略化は許されないようだ。

だから群ようこも三味線を習いに行って、いちばん最初は小唄を教わった。

「水の出花」という小唄はとてもとても短い唄なのだが、それを唄うだけでもかなり難しいということが、エッセイの内容から伝わってきた。

なにしろ譜面がなく、先生と一対一で向き合って座り、口伝で歌詞や調べを覚えていかなければならない。

しかも小唄は現代の歌と音の運びがまったく異なり、とても覚えにくいのだ。

私は東京で寄席に通うようになり、落語の合間にはさまれる三味線と小唄の芸を初めて耳にした。

これまでに聞いたことがないなんとも不思議な調べに虚をつかれた。

あれを自分が唄うとなると、変な気分になるだろう。

小唄や三味線は過去に経験したことがないナニカなので脳が非常に混乱するということが本書にも書いてある。

一度芸事に入門すると、週に一度30分のレッスンだけではなく、三味線の購入、発表会などのイベント、名取するかどうかといったあれこれの問題が次々と押し寄せてくる。

当然それぞれのやりとりにお金がかかる(群ようこが最初に買った稽古用の犬皮の三味線は9万円だった)。

つくづく芸の道は長くて険しいと確認した。

群ようこの三味線奮闘記を読むと、寄席の舞台で軽妙に三味線を弾いているお姐さんたちが神様のように輝いて見えてくる。

この本を読んでよかったと思った。

三味線を習いたいと思っている人にもぜひ『三味線ざんまい』を読んでみてほしい。

おすすめ記事:はり100本 鍼灸で甦る身体(竹村文近著)

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

スウェーデンの警察小説が面白い

(※ネタバレありです) スウェーデンの警察小説にはまっている。 ストックホルム警視庁殺人課のマルティン・ベックが主人公のシリーズ全10冊だ。 先日全巻を読了した。 (出版年)(タイトル)1965 ロセ …

ホテル・ガンジスビュー

ホテル・ガンジスビュー/松本榮一

『ホテル・ガンジスビュー』は、1948年生まれの写真家/作家、松本榮一が書いたインド・バラーナス滞在記だ。 インドはとても広くて多様なので、旅行者によって旅の経験はまったくバラバラだ。 少なくともパッ …

ジャングルへ行く!:医者も結婚もやめて/林 美恵子

(※ネタバレありです) 林美恵子著『ジャングルへ行く!』を読むと、『こんなに面白い人がいるんだ!』と感動させられる。 親が医者で、本人も医者となるべく育てられ、実際に東京で整形外科医として毎日忙しく働 …

チョンキンマンション

チョンキンマンション 世界の真ん中にあるゲットーの人類学/ゴードン・マシューズ

著者のゴードン・マシューズは香港中文大学の人類学部の教授だ。 2006年から3年半にわたってチョンキンマンションの人類学的調査を行っている。 チョンキンマンションは、香港の観光客があつまるネーザンロー …

自然を取り戻すためのおすすめ本

1. 『英国貴族、領地を野生に戻す』(イザベラ・トゥリー著) 『Wilding(野生化)』が『英国貴族、領地を野生に戻す』の原題だ。 場所はイギリスの南東部ウェストサセックスにあるクネップという広大な …