ドン・キホーテの休日7/鴻上尚史
投稿日:2020年10月22日 更新日:
演劇人・鴻上尚史氏のエッセイを読んだ。
演劇が本職だが、その他のいろいろなテーマのエッセイが詰まっている。
22歳から演劇業界で働き、その収入で生き続けているというだけでも奇跡の人のような気がする。
ずっと変わらず「演劇命」で、自分の仕事に誇りと自信を100パーセント持っている。
私は「絶対できそうにない事」の一つが演劇で、やることを考えただけでとても恥ずかしい。
だから逆に、それを堂々とできている人を尊敬している。
演劇をしたい人が世の中にこれほどあふれていることにも驚異を感じる。
自分にとっては、とても摩訶不思議な世界なのだ。
好奇心と怖いもの見たさで観劇に行くのは1-2年に一度くらいだ。
人に誘われて行くことが多い。
直近では昨年、新宿・花園神社境内に張られたテントの中で「蛇姫様―わが心の奈蛇」というマニアックな劇を観た。
テントの中で不思議な雰囲気に包まれた。
さて、『ドン・キホーテの休日7』の中でいちばん印象に残ったのは、神戸の『オープン・ワークショップ』に車椅子の女性が参加したエピソードだった。
演劇界で高みを目指す(?)だけでなく、こういったワークショップを主催して、一般の人とも分けへだてなく交流するのが鴻上氏のすごいところだと思う(無名の人もオノ・ヨーコも同じ扱いだ)。
間接的に、ここに書いてあるエピソードが本当にあったと知るだけでも、これまでよりも生きる希望が湧いてくる気がする。
ロンドンでの修行時代の学友の話、イギリス人たちと30人で渋谷のカラオケボックスに詰まり、皆で延々大合唱する話はとてもシュールで面白かった。
イギリス時代の話については鴻上氏の自賛もあり、さっそく『ロンドン・デイズ』と『ドン・キホーテのロンドン4』をアマゾンで注文した。
鴻上氏は演劇のあれこれに対して自信満々で意見を述べる。プロ中のプロっぽいスタンスなのだ。
『この人の演劇は面白くないはずがない』と結論づけざるをえない。
実際に見てみたいと思った。
エッセイにも登場する彼の劇団「第三舞台/サードステージ」で検索すると、すでに解散していた(本書は2001年に出版されたものなので)。
が、鴻上氏演出の「ハルシオン・デイズ」がまさに上演間近ということがわかった。
「自殺」というテーマも興味をひかれるものだったので、セブンイレブンのマルチコピー機を使ってチケットぴあからクレジットカードでチケットを1枚買った。
8900円という金額は高いと思ったが、これが鴻上氏の相場なのだろう。
11月の上演当日がとても楽しみだ。
[追記]「ハルシオン・デイズ」の感想
鴻上尚史氏の舞台を初めて観た。
客席の大半が、自分と似たような若くも年寄りでもない地味な雰囲気の女性で埋まっていたのが印象的だった。
なんとなく常連さんが多いようだった。
(※以下ネタバレありです)
二重人格(1人2役)のような混乱した役を演じる人が全登場人物4人中2人いて、それ以外の1人は普通の姿をしているけど他の3人からは見えない幽霊の設定で、まとも(?)な人はたった1人(この人がやはりいちばん強いインパクトがあった)。
最初このごちゃごちゃした人物設定に戸惑いを覚えた。
脚本は長く複雑で、細かいギャグが多い。
この脚本を覚えて完ぺきに演じるのはとても大変そうだと、素人でもわかった。
新進気鋭の一流の建築家が巨大で複雑な、遊び心のある美術館などを設計して建てる・・・それの演劇版のように感じた。
作品を見上げた素人は「すごーい!」と驚嘆すればそれでいいのだろうか。
それにしても、テーマを伝えるためのもっとストレートな表現方法はないものだろうか?
演じる方も、観る方も、こんなに苦労してテーマを表現したり、理解したりしなければならない必然性はあるのだろうか?
舞台のセットや背景や音響などはこれまで見た演劇の中でも洗練されていてきれいだと感じた。
オープニングテーマとエンディングテーマの流れはテレビのバラエティ番組を見ているようだった。
ストーリーはジグザグしていて頭にスッと入ってこないのに、終盤には気持ちが盛り上がって、涙が止まらなくなるのが不思議だった。
いろんな舞台効果/音響効果と俳優さんたちの捨て身(?)の熱演に心が揺さぶられたのかもしれない。
鴻上氏はこの舞台をイギリスでも演出したと書いていたが、日本人でもわかりづらい内容なので、相手が外国人の俳優であればどれほどの混乱と反発が起こっただろうと、想像するだにおそろしい。
※2011年8月23日から9月18日までウエストロンドンのリバーサイドスタジオで上演されたらしい。
↓LONDON THEATREの英語サイト
https://www.londontheatre.co.uk/theatre-news/news/halcyon-days-by-shoji-kokami-at-riverside-studios-23-aug
執筆者:椎名のらねこ
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