なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

ロシアについて/司馬遼太郎

投稿日:

『ロシアについて』を読むと意外な点が多々あった。

まず「ロシア人によるロシア国は、きわめて若い歴史をもっている」と書かれている。

ロシア国家の決定的な成立は、わずか十五、六世紀にすぎないのです。若いぶんだけ、国家としてたけだけしい野性をもっているといえます

4か月前にロシアがウクライナにいきなりしかけた攻撃には意外性と驚きしかなかったが、『ロシアについて』を読むと「そういう国なんだ」と妙に納得させられた。

冷戦時代のソ連のイメージから自分のロシア史は始まっている。

その前にロシア革命という歴史的な事件もあった。

ロシア革命の時点ではすでに理論が複雑なので、成熟した国なのだと思っていた。

「社会主義国家」を樹立して、「超大国」に成長し、アメリカと互角にならんだのだと。

だがそれは錯覚だったし、『ロシアについて』を読むと、ロシアが周囲の国々を攻撃するより、こてんぱんに攻撃されている描写のほうが多い。

土地の広さと攻撃力の強さとは比例しないようだ。

13世紀より前のロシアにかんする歴史的資料は少ないという。

だがロシア人は基本的にはロシア平原で農耕を営んでいた。

そしてロシア農民(原スラヴ人)は東からやってくるアジア系の遊牧民族(フン族、アヴァール人等)に幾度も蹴散らされてきた。

「ロシア人の成立は、外からの恐怖をのぞいて考えられない」

大国なので、ロシアがびくびく縮み上がっている姿はイメージできない。

でも実はそうなのだ。

ウクライナに関連して話題になるロシア人の国家(キエフ国家)についても記述がある。

小規模だが、9世紀に成立した。

だがキエフ国家は、海賊を稼業としていたスウェーデン人が海から川をのぼってやってきて、スラヴ農民を支配してつくった国だった。

ビザンティン文化を持ち込み、ロシア正教の洗礼を受けさせた。

13世紀にはロシア平原にモンゴルからチンギス汗がやってきた。

チンギス汗が率いる遊牧集団は自分たちの専門活動以外を見下しており、農作物など必要があればすべて略奪によってまかなった。

1243年から1502年までは、ロシア平原にモンゴル人によるキプチャク汗国がたてられ、259年間にわたってロシア民族を暴力支配した。

現在ロシアは支配されるよりは支配する国のイメージが強いが、『ロシアについて』によると16世紀までは支配され、蹂躙される一方の国だったのだ。

以上は『ロシアについて』のさわりだが、じゅうぶん本質をついている。

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

海流のなかの島々(上・下)/ヘミングウェイ

(※ネタバレありです) ヘミングウェイはあまりにも男くさいイメージがあって、気になってはいたものの今までほとんど読んでいなかった。 だいぶ前に新潮文庫の『老人と海』の新訳版が出たニュースを聞いた。 新 …

不思議の国パキスタン

不思議の国パキスタン/斎藤由美子

いろいろ探してもパキスタンについて書かれた本は少ない。 『不思議の国パキスタン』は貴重なパキスタン旅行記だ。 女性の一人旅。 でも現地にルブナという名の友だちがいた。 ルブナとは2年前のキプロス旅行中 …

時の娘

時の娘/ジョセフィン・テイ

(※ネタバレありです) リチャード三世善人説!? リチャード三世は1452年に生まれて1485年に死亡したイングランドの王様だ。 1591年に初演されたシェイクスピアの戯曲『リチャード三世』により残虐 …

ジャングルへ行く!:医者も結婚もやめて/林 美恵子

(※ネタバレありです) 林美恵子著『ジャングルへ行く!』を読むと、『こんなに面白い人がいるんだ!』と感動させられる。 親が医者で、本人も医者となるべく育てられ、実際に東京で整形外科医として毎日忙しく働 …

『法服の王国』by黒木亮

(※ネタバレありです) あらすじ/テーマ 憲法を守り、人権を守る、誠実な裁判官の半生を描いた小説。 裁判官の歩む道は2つに分かれているようだ。 1.出世コース 2.憲法・人権の擁護者として歩むイバラの …




 

椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。