魅せられて、バリ島/中田ゆう子
投稿日:2019年9月26日 更新日:
バリ島の魅力
バリ島旅行から帰って読んだ本。
バリ島は評判以上に素敵で、気持ち良く、夢中になってしまった。
バリ島をあらわすには、「神々の島」という言葉がいちばんぴったりくる。
バリ島に一歩踏みいれたときから私たちはつねにさまざまな神様にかこまれて暮らすことになる。
観光客でさえ神様と一緒の生活になるのだから、バリ島の住人は毎日が神様漬けといっていいくらい、宗教のしきたりにしばられている。
毎日朝から神様に手づくりの(あるいは購入した)お供え物をそなえ、家族の成長の節目ごとに、また伝統的なしきたりにしたがって、いつもなんらかの宗教儀式をおこなっている。
宗教色の希薄な日本人からすれば、ありえないほど面倒くさそうだ。
ただ、観光客としてバリを訪れて、神様、お供え物、伝統的な衣装に身をつつみ、しきたりにのっとって行動するバリ人をながめるのは、このうえなく面白い。
朝から晩までバリ島で暮らすだけで、まさに異文化体験ができる。
そこがバリ島の最大の魅力で、バリ島から神様がいなくなればただの島になってしまう。
バリ島旅行の前後に、ガイドブックも含めバリやインドネシアにかんする本をたくさん読んだ。
本で研究しても不思議なバリ島。現地で見るもの聞くもの不思議だらけのバリ島。帰って疑問を解消するためにインターネットのブログ記事やバリ島にかんする本を読んでもどんどん知らない情報、不思議な新事実がでてくる。
バリ島とかかわり、不思議の探求をはじめると、きりがないのだ。
だから世界中の多くの人たちが、ふとしたきっかけでバリを訪れ、そのままどっぷりとバリにはまっていく。
中田ゆう子さん
『魅せられて、バリ島』の著者の中田ゆう子さんも、バリにとらわれてしまった一人だ。
中田さんは北海道出身。
1977年に34歳で初めてバリ島を訪れ、それ以降バリの神様に引っぱられるようにバリ島を何度も戻っていく。
そして2019年現在までバリとの縁は続いているようだ。
『魅せられて、バリ島』が出版された1998年には、中田さんはイラストレーターだった。
現在はバリ島との強い結びつきを生かして、バティック作家として活動している。
あらすじ/感想
(※ネタバレありです)
最初はボロブドゥール遺跡が目的のジャワ島とバリ島をめぐる8日間の観光ツアーだった(1977年1月)。
次は1978年2月~6月。バリ島に呼ばれて・・・
デンパサール市内でたまたま見つけた2軒目のホテルが、中田さんの運命を決めるプリ・ペメチュタンホテルだった。
なんとこのホテルはバリ島の有名な王族が経営するホテルだった。
中田さんはバリに呼びだされていそいで向かったので、前知識はあまりない。インドネシア語は「スラマット・パギ(おはようございます)」だけ。
それでも持ち前の好奇心と人懐っこさでどんどんバリ人の懐に飛びこんでいく。
バリ人も優しくて人懐っこい人が多いので、バリ島では人と人との距離が縮まるのはとてもはやい。
結果的に、中田さんがバリ島でいちばん仲良くなった相手はこの王族一家だった。
その後も幾度となくバリに飛び、ペメチュタンホテルに滞在し、家族とおしゃべりしたり、一緒に行動していくうちに、中田さんは王族の家族の一員として迎え入れられるようになった。
3度目のバリ訪問は1986年3月。
4度目は1986年12月~1987年2月。
面白いのは、中田さんより前にも、ペメチュタンの王族の家族待遇になったオーストラリア人がいたことだ。
中田さんは、このワーガーさんというオーストラリア人の画家とも親しくなって、のちにはシドニーの自宅にも招かれることになる。
バリにはまって、バリ人と結婚して、バリ島で暮らす日本人は少なくない。
でも、バリ島の名門の王族と家族同然にかかわったという点で、中田さんの体験はとても貴重なものだ。
『魅せられて、バリ島』には王族の悲しい歴史、家族構成から日常生活、カースト、宗教儀礼、果ては王様の葬儀の様子まで詳細に描かれている。
中田さんは王族の家族の一員として、内側からすべてを観察し、写真に撮り(本書ではそれをイラスト化している)、記録した。
他では読めないバリの秘密がこの本には詰まっている。
執筆者:椎名のらねこ
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