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オーウェル評論集/ジョージ・オーウェル

投稿日:2020年3月5日 更新日:

『オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル(岩波文庫)

オーウェルの評論集

ジョージ・オーウェル(1903~1950)の評論集を読んだ。

評論だけではなくエッセイと呼んだほうがピッタリくるような気さくな調子で書かれた文章も一緒に収められている。

テーマにはユダヤ人差別、ナショナリズムといった人間社会にとって重要な、根源的なテーマも含まれている。

一般的に、重いテーマを提示されると、人は難しい顔をして、重々しく、難しく論じようとする。

しかしオーウェルは違う。

テーマの軽重にかかわらず、彼の態度は一環している。身近に引きつけて考え、率直に論じる。いかなる批判もおそれない。これこそがジョージ・オーウェルの真骨頂だと思う。

「なぜ書くか」(1946)

オーウェルは幼い頃から物書きになると思っていた。

散文を書く動機は以下だと分析する。
1. エゴイズム、虚栄心
2. 世界、言葉に対する美的関心
3. 歴史を記録したいという欲望
4. 政治的目的

オーウェルは本来1~3に重きをおく人間だが、戦争の時代、職業上の経験、貧困などの諸要素によって自らを政治的な作家、時事評論家の立場におくことになった。

オーウェルの1936年以降の主な作品は、

直接間接に全体主義を攻撃し、わたしが民主的社会主義と考えるものを擁護するために書いている。

代表作は『動物農場』(1945)、『1984年』(1949)等。

「P. G. ウドハウス弁護」(1945)

イギリスのユーモア作家P. G. ウドハウス(1881~1975)といえば、日本では2018年10月に時の皇后美智子さんが『ジーヴズの事件簿』のファンであることを明かして、その後ジーヴズ・ブームが来たことが記憶に新しい。

私も「美智子さんが愛読しているジーヴズ・シリーズというのはどれほど面白いんだろう?」とミーハーな興味をそそられて、本屋に駆けつけて実際に購入した。

感想は、三上延著『ビブリア古書堂の事件手帖』風だと思った。軽いタッチの事件解決ミステリーで、読み始めると止まらなくなる。

ジーヴズ・シリーズのストーリーは、ダメダメグズグズな金持ちの若だんなを超優秀な執事が知恵を働かせて鮮やかに窮地から救い出すという話(シリーズ全部は読んでないけど)。

とにかくライトノベル風で面白く気晴らしにはもってこいだ。

そのウドハウスの名前が『オーウェル評論集』にいきなり登場した。

しかもタイトルは「P. G. ウドハウス弁護」だから物々しい。

ウドハウスは「政治に関心をもったことがない」人間で、政治的センスはゼロだという。

戦時中ウドハウスの政治的無知はナチスの宣伝に利用された。

ドイツはイギリスの敵なので、ドイツを擁護するような発言を大々的に(無邪気に)おこなってしまったウドハウスは、いわば「非国民」であると国中から激しく非難され、図書館から著作が撤去されるほどの騒ぎになった。

1941年というタイミングも戦局的にマズかったらしい。

ウドハウス非難はその後も何年も続き、1945年にオーウェルは「P. G. ウドハウス弁護」を発表した。

オーウェルの主張は、政治オンチのウドハウスは各国の宣伝戦のいけにえにされただけであり、「反逆者・売国奴」を本気で罰したいなら犯人は他にいくらでも挙げられる、というものだ。

「英国におけるユダヤ人差別」

別記事「ユダヤ人を知るためのおすすめ本」に読んだ感想を書いた。

関連記事:イギリスを知るためのおすすめ本

■オーウェル評論集 – ジョージ・オーウェル(岩波文庫)

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