なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

空手道ビジネスマンクラス練馬支部/夢枕獏

投稿日:2020年11月6日 更新日:

(*ネタバレありです)

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』の単行本が図書館の「リサイクル資料」になっていたので持って帰って読んだ。

夢枕獏は身体をぶつけ合うような戦闘シーンをよく描く作家で、またそれが上手い。

だから全編「空手」をテーマにしたこの本は絶対に面白いと思った。

実際、読みやすく、楽しく、読後はとても充実した気分になった。

本書で主人公になっているようなサラリーマンの男性ならば、すぐにでも近くの空手道場に入会パンフレットをもらいにいきたくなるのではないだろうか?(本書は1992年に出版された作品なので、今なら即座にウェブ検索だ)

それほど身体を鍛えることの魅力や楽しさや充実感がこの本には溢れている。

主人公が普通の42歳の既婚のサラリーマンというのがいい。

元小説家志望という設定も少し作者の影が映っていていい。

空手を習いに行くきっかけや行きつ戻りつする心境の変化がドラマチックかつリアルに描かれている。

身体を動かし、動かすことにどんどん慣らしていく過程、ときどき出てくる突発的な路上でのケンカのシーン、勝者と敗者でくっきりと分かれる立場の違い、敗者の惨めさ、いろんな人生を背負った人たちが出会い、反発し、互いの違いを認め合っていく流れ・・・

約30年前に書かれた本だがテーマはいつの時代にも変わらない普遍的なものなのでいつだれが読んでも理解できる。

読者サービスというか、エンターテイメントに欠かせない恋愛エピソード、職場の若い部下との不倫シーンなども素敵だ。

もちろん小説なので、現実生活よりは何倍も「偶然の出会い」要素の働きが多いが、あまり細かいことを気にせずに通勤中や休日読み物として利用するなら最高の作品だと思う。

現代の都会生活はなにかと便利すぎて身体が鈍りがちだ。

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』を読んでモチベーションを上げ、なんとか身体をスリムに鍛え上げたいものだ。

ぜひ読んでみてほしい。

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』のAmazon商品ページ(Kindle版)

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』のAmazon商品ページ(新書版)

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

ドン・キホーテのキッス5/鴻上尚史

鴻上尚史さんの著作を読むのは初めてで、『ドン・キホーテのキッス5』はとても面白かった。 なぜシリーズの5巻から読み始めたかというと、図書館に『ドン・キホーテ』シリーズの5・7・8巻しかなかったからだ。 …

オーウェル評論集/ジョージ・オーウェル

『オーウェル評論集』ジョージ・オーウェル(岩波文庫) オーウェルの評論集 ジョージ・オーウェル(1903~1950)の評論集を読んだ。 評論だけではなくエッセイと呼んだほうがピッタリくるような気さくな …

名古屋駅西 喫茶ユトリロ/太田忠司

(※ネタバレありです) 名古屋へ、人生初の一人旅 今年の2月に人生初の一人旅に出かけた。 行き先は、遠すぎず近すぎず東京から1泊2日で行きやすそうだったので、名古屋にした。 行く前に友人・知人から名古 …

『羆嵐』by吉村昭

『羆嵐(くまあらし)』by吉村昭(新潮文庫) (ネタバレありです) ◎あらすじ 1915年12月9日、北海道の三毛別六線沢(さんけべつろくせんさわ)の村落でヒグマが2人の人間を襲った。 ヒトの味を覚え …

『博士と狂人』byサイモン・ウィンチェスター

サイモン・ウィンチェスター著『博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話』(ハヤカワノンフィクション文庫) (※ネタバレありです) オックスフォード英英辞典をめぐるスリリングな裏話 英語に関心のある人 …