なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

空手道ビジネスマンクラス練馬支部/夢枕獏

投稿日:

(*ネタバレありです)

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』の単行本が図書館の「リサイクル資料」になっていたので持って帰って読んだ。

夢枕獏は身体をぶつけ合うような戦闘シーンをよく描く作家で、またそれが上手い。

だから全編「空手」をテーマにしたこの本は絶対に面白いと思った。

実際、読みやすく、楽しく、読後はとても充実した気分になった。

本書で主人公になっているようなサラリーマンの男性ならば、すぐにでも近くの空手道場に入会パンフレットをもらいにいきたくなるのではないだろうか?(本書は1992年に出版された作品なので、今なら即座にウェブ検索だ)

それほど身体を鍛えることの魅力や楽しさや充実感がこの本には溢れている。

主人公が普通の42歳の既婚のサラリーマンというのがいい。

元小説家志望という設定も少し作者の影が映っていていい。

空手を習いに行くきっかけや行きつ戻りつする心境の変化がドラマチックかつリアルに描かれている。

身体を動かし、動かすことにどんどん慣らしていく過程、ときどき出てくる突発的な路上でのケンカのシーン、勝者と敗者でくっきりと分かれる立場の違い、敗者の惨めさ、いろんな人生を背負った人たちが出会い、反発し、互いの違いを認め合っていく流れ・・・

約30年前に書かれた本だがテーマはいつの時代にも変わらない普遍的なものなのでいつだれが読んでも理解できる。

読者サービスというか、エンターテイメントに欠かせない恋愛エピソード、職場の若い部下との不倫シーンなども素敵だ。

もちろん小説なので、現実生活よりは何倍も「偶然の出会い」要素の働きが多いが、あまり細かいことを気にせずに通勤中や休日読み物として利用するなら最高の作品だと思う。

現代の都会生活はなにかと便利すぎて身体が鈍りがちだ。

『空手道ビジネスマンクラス練馬支部』を読んでモチベーションを上げ、なんとか身体をスリムに鍛え上げたいものだ。

ぜひ読んでみてほしい。

■空手道ビジネスマンクラス練馬支部 – 夢枕獏■

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

男らしさの終焉

男らしさの終焉/グレイソン・ペリー

著者のグレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれのアーティストだ。トランスヴェスタイト(女装家)として有名。テレビ番組の司会者。ロンドン芸術大学の総学長。大英帝国勲章受賞者でもある。 ※ELLEにプ …

ロシアについて

ロシアについて/司馬遼太郎

『ロシアについて』を読むと意外な点が多々あった。 まず「ロシア人によるロシア国は、きわめて若い歴史をもっている」と書かれている。 ロシア国家の決定的な成立は、わずか十五、六世紀にすぎないのです。若いぶ …

愛さずにはいられない/藤田宜永

感想 藤田宜永と同じく作家である妻の小池真理子が推薦していたので買って読んだ。 「母と一緒にいることが、僕の人生の最大の不幸としか思えなかった」 ・・・という記述がある藤田宜永の自伝的小説だ。 私自身 …

ある詩人への挽歌

ある詩人への挽歌/マイケル・イネス

(※ネタバレありです) 『ある詩人への挽歌』は評判のよいスコットランド・ミステリーだが、私にはあまりピンとこなかった。 スコットランドが舞台なのはうれしかったが・・・ 当初『ある詩人への挽歌』で描き出 …

イギリス関係の作品リスト

(*随時更新) ■くまのパディントン/A Bear Called Paddington 雑貨屋でパディントングッズを見て、「そういえばイギリスといえばパディントンがいた!」と思い出して、図書館でパディ …




 

椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。

お問い合わせ先:siinanoraneko@gmail.com