母親になって後悔してる/オルナ・ドーナト
投稿日:2022年5月24日 更新日:
まとめ・感想
(※ネタバレありです)
いちばん意外だったのは、母親になって後悔していることと、子どもを愛していることが両立していることだった。
それとこれとは別問題なようだ。
両極端な気持ちが1人の人間の中に同居することによって、混乱や苦しみが生まれる。
本書には、自分を統合失調症のように感じる母親もいたし、実際にセラピーに通っている母親もいた。
もともと自分の世話だけをしていた当初の自分はそのままいて、他に、母親の役割をおしつけられた自分が突然あらわれる。
なぜか後から来たそちらのキャラクターのほうがメインのキャラクターになっている。
しかし子どもの世話をする人間がいなければならないし、子どもをこの世界に連れてきたのは自分であるという責任感から、子どもの世話にあけくれる日々が始まる。
いったん母になるとその後一生、母であることから逃れられない。
子どもが小さいときだけではなく、離れていても、どこにいても、自分が責任を負い、心配し続けることから逃れられない。
最初からやり直すこともできないし、もう手遅れなのだ。
そのことが母親になって後悔している女性たちを苦しめる。
出産すると、スケジュールがすべて子ども中心のものになり、自分のために使える時間がなくなる。
以前はしていた趣味などに割くエネルギーもなくなる。
選択肢や自由がいっさいなくなる。
しかも子育ての責任を負わされているのは母親だけで、父親の存在感はない。
むしろ子どもができると父親はそれまでよりも残業を増やし、新しい趣味を探し始める。
そばに赤ちゃんがいるとひどく疲れるために、その状況から逃れようとする
父親は抜け穴を作って、時間的・空間的に不在になることができる
同じことを母親がいったり、やったりしたら、どれほど非難されることか。
母親と父親の子どもに対する立場は全然フェアじゃない。
そのことも母親の大きなストレスになっている。
子どもの世話をするという行為には向き不向きがある。
誰もが介護職に就きたいと思わないように・・・
母親になって後悔している女性たちは子どもの世話が苦手だったり、完ぺきにできるけど耐えがたいほど苦痛だったりする。
父親のほうがうまく世話できる夫婦もいるし、結局離婚して父親が子どもを引き取った夫婦もいる。
母親になって後悔している気持ちは産後うつとは違って、一生続くものだ。
母親になって後悔しているのに、なぜ2人目、3人目の子どもを産むのか?という疑問に対する答えも書いてあった。
本書の調査現場となっているイスラエルでは、ひとりっ子が推奨されていない。
ひとりっ子は、子どもの人格形成にとって有害で、介護などの負担を一人に負わせることになるので不道徳だとみなされる。
女性は、女は子どもを産むものという「文化的・社会的期待」に促されて1人目の子どもを産み、今度はその子どものために2人目の子どもを産む。
1人目の子どもから弟か妹がほしいと請われた母親もいる。
また、2人目、3人目の子どもを産む理由として、いったん母親になったらそれを取り消すことができないので、あと何人産んでも同じという考えかたもあった。
やるべきことをさっさと終わらせるという感覚で数人の子どもをたてつづけに産んだ女性もいた。
自分の子どもに、母親になったことを後悔していると伝える女性は少ないが、存在する。
母親になったことを後悔しているが、自分の子どものことはすごく愛している。
その2つの感情が両立することを人に伝えるのは難しい。
日本でもイスラエル同様、母親になることのデメリットはあまり語られていないと思う。
デメリットがないはずがないにもかかわらず。
『母親になって後悔してる』によると、デメリットは・・・
「母になると、人生が二度と完全に自分自身のものにならない」ことだ。
子どもを持つことは必須ではない
執筆者:椎名のらねこ
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