なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

音楽/小澤征爾&武満徹

投稿日:2023年8月26日 更新日:

中国とのかかわり

音楽についての本質的な話や原始的な話を作曲家の武満徹と指揮者の小澤征爾がざっくばらんに語り合った貴重な記録。

最初に意外だったのは、2人とも6歳までの子供時代を中国で暮らしていたこと。

武満は、東京生まれ。北京と主に大連で育った。
小澤は、奉天(瀋陽)生まれ。北京で育った。

このため2人とも中国に愛着をいだいている。

最初の音楽とのかかわり

武満の父親は音楽好きで、武満も大連にいた頃からレコードでジャズなどを聴いていた。

小澤の母親はキリスト教徒で、小澤も日曜学校で讃美歌を歌って音楽を覚えた。音楽好きの3人の兄弟の影響も大きかった。父親は都々逸が好きだった。

西洋との音の違い

日本とヨーロッパで鳴らす楽器の音は違うという。

ホール、湿度の関係もあるが、それだけではないと2人は語り合う。

日本のせせっこましさ。トランペットだと口先と出口だけで鳴らしてしまう。

途中の管に充分空気がかよっていないので、豊かな金色のいい音が出ない。

日本人の音のいつくしみ、愛の問題だと武満は語る。

あなた(小澤)の音楽を素晴らしいと感ずるのは、その愛し方だよね。音のいつくしみ方のちがいだよ。音を自分で掴んでみよう、触ってみようとするわけでしょ。

音楽教育について

小澤は、恩師の斎藤秀雄に言われて、アメリカのタングルウッドで教えはじめた。

いざ教え始めると、時間を忘れて指導にのめりこむ。

武満も、エール大学で、他の肝心なことができなくなるくらい教育に夢中になってのめりこんだ。

教育には麻薬的な魅力があると、小澤は語る。

指揮について

小澤征爾は一流の指揮者だけれども、この対談の中では、あのときいかにうまく指揮ができなかったか、失敗談などが語られる。

対談時、小澤は46歳、武満は51歳だった。

一方、魔法使いのように指揮棒をふるう(あるいはふるわない)小澤の指揮の先生たち(斎藤秀雄、シャルル・ミュンシュ、ヘルベルト・フォン・カラヤン)についても語られる。

シャルル・ミュンシュは、やっぱり天才だね。オーケストラを、雰囲気で弾かしちゃうんだよ。酔っ払ってるみたいな足どりで出ていってね、サーッと振る。その瞬間にもう完全に彼がオーケストラの主役なわけ。

武満の作曲の先生は、清瀬保二だった。

他にも、以下のようなテーマについて語り合われる。

・現代音楽は必要か? 
・国家と芸術家の理想的な関係とは?
・日本のオペラ事情
・「御上の音楽」意識
・小澤と中国オーケストラ
・小澤の愛国心

『音楽』のAmazon商品ページ

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

歓喜の街カルカッタ

歓喜の街カルカッタ/ドミニク・ラピエール

(※ネタバレありです) 読書旅行 コロナ下、外国旅行は夢のまた夢なので、代わりにインドを舞台にした本を読んでいる。インドのガイドブックも同時進行で読むと楽しい。 『歓喜の街カルカッタ』は、インドの中で …

ある詩人への挽歌

ある詩人への挽歌/マイケル・イネス

(※ネタバレありです) 『ある詩人への挽歌』は評判のよいスコットランド・ミステリーだが、私にはあまりピンとこなかった。 スコットランドが舞台なのはうれしかったが・・・ 当初『ある詩人への挽歌』で描き出 …

ネガティブケイパビリティ

ネガティブ・ケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力/帚木蓬生

ネガティブ・ケイパビリティ 生きているといろんな問題が発生する。 自分に関するトラブルなら自分でなんとか事態に対処できるからいい。 しかし実際に起きるトラブルのほとんどが自分以外の他人に関わるものだ。 …

鬼平よりカッコいい池波正太郎

『青春忘れもの』by池波正太郎 池波正太郎への偏見 「鬼平=鬼の平蔵」こと長谷川平蔵は、池波正太郎の大人気シリーズ『鬼平犯科帳』の主人公だ。 当時江戸の町を跋扈した悪質な盗賊を逮捕するのが仕事で、今風 …

犬

若年性認知症をうたがう

夫の若年性認知症をうたがう 同学年の夫は現在53歳だ(私は早生まれで52歳)。 もともと記憶力が良い人なのに、最近とても忘れっぽくなった。 『老化のせい?』と考えると、『まぁ、しかたない』と思えるが、 …




 

椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。