なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

異国に死す/ドナ・レオン

投稿日:2024年12月10日 更新日:

(※ネタバレありです)

コロナ以前にヴェネツィアに旅したことがある。

ヴェネツィアは「世界一映画っぽい街」だと思い、とても気に入った。

つまり街全体がまるで映画のセットのような場所だと・・・

まぁ世界中を見たわけじゃないからテキトーな感想にすぎないが。

ともかく、そのヴェネツィアを舞台にした小説があると知り、すぐに読んでみた。

作者のドナ・レオンは、1942年にアメリカで生まれた。

ヴェネツィアの大学で英文学の講師として、イタリアの米軍基地で英語教師として働いた経験が『異国に死す』に色濃く反映されている。

『異国に死す』は、グイード・ブルネッティ警視シリーズの2作目だ(1作目は『死のフェニーチェ劇場』)。

2作目の方を最初に読んでしまったけど、特に違和感は感じなかった。

『異国に死す』がヴェネツィアを堪能できる作品で良かったので、順番は前後したが『死のフェニーチェ劇場』も読むつもりだ。

主人公のグイード・ブルネッティは生粋のヴェネツィア人で、ヴェネツィア警察に勤めている。

警視という高い地位にありながら、人柄が気さくでまったく偉ぶったところのない、人情味のある良い人だ。

家族は、英文学講師の妻パオラと16歳の息子ラッファエーレ、12歳の娘キアラの3人だ。

パオラの両親は伯爵夫妻で、ブルネッティは身分違いの結婚をしたようだ。

とはいえブルネッティは操作中の事件についてパオラにほとんど何でも話すし、パオラの父親である伯爵にさえ、事件にかんする助力を求めたりする。

家族関係はいいようだ。

そういえば、シリーズ1作目を読んでないので、この夫婦のなれそめはまったくわからない。

『死のフェニーチェ劇場』を読めば何かわかるだろう。

伯爵家と縁続きというちょっと特殊な家族関係もていねいに描かれるし、物語の舞台として申し分のないヴェネツィアの運河や街の様子も生き生きと描写される。

ヴェネツィアという特別な街に生まれて警察官として暮らす人の生活を読んでいるだけでも楽しいが、本書のメインテーマは殺人事件の謎解きである。

運河に浮かんだ死体が見つかるというのはいかにもヴェネツィアっぽい幕開けだが、小説を最後まで読むと驚きの結末が待っている。

『異国に死す』を読むまでは、ヴェネツィアは夢の国だったが、ブルネッティについて事件を追っていくうちにヴェネツィアやイタリアの暗部が見えてきた。

イタリアは日本とは違う国だと感じるし、イタリア人の考えも日本人とはだいぶ異なるようだ。

ヴェネツィアが好きな人にも読んでほしいし、これからヴェネツィアに行く人にもぜひ読んでほしい。

運河に浮かんでいた死体は、重大な国家機密を握った米軍兵士だった──ヴェネツィアの下町を舞台に繰り広げられる味わい深い人間ドラマ

(Amazonの説明文)

 

『異国に死す』のAmazon商品ページ(文庫版)

ドナ・レオンのWikipedia(英語版)

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

自閉症だったわたしへ

自閉症だったわたしへ/ドナ・ウィリアムズ

『自閉症だったわたしへ』の内容(1) 『自閉症だったわたしへ』を読むと、自閉症の人がどんなふうに感じ、どんなことを考えて日常生活を送っているかがわかる。 自閉症の人の生活は、そうでない人には想像もつか …

ロシアについて

ロシアについて/司馬遼太郎

『ロシアについて』を読むと意外な点が多々あった。 まず「ロシア人によるロシア国は、きわめて若い歴史をもっている」と書かれている。 ロシア国家の決定的な成立は、わずか十五、六世紀にすぎないのです。若いぶ …

トラウマは克服できるのか?

目次 ・幼少期にうけたトラウマを覚えていない ・どうしても子供を産みたくない ・それで、トラウマは克服されたのか? ・トラウマを克服する方法 ■『身体はトラウマを記録する』の感想■ 幼少期にうけたトラ …

三味線ざんまい

三味線ざんまい/群ようこ

群ようこが三味線を習っていたとは知らなかった。 この三味線のレッスンがとても難しく大変そうだ。三味線は弦がたった3本しかないにもかかわらず。 私は飽きっぽく根気がないので楽器類の習得は最初からあきらめ …

『羆嵐』by吉村昭

『羆嵐(くまあらし)』by吉村昭(新潮文庫) (ネタバレありです) ◎あらすじ 1915年12月9日、北海道の三毛別六線沢(さんけべつろくせんさわ)の村落でヒグマが2人の人間を襲った。 ヒトの味を覚え …