殺人者の顔/ヘニング・マンケル
投稿日:2024年12月14日 更新日:
(※ネタバレありです)
スウェーデンの作家ヘニング・マンケルが書いた『殺人者の顔』を読んだ。
大人気のクルト・ヴァランダーシリーズ第1作目だ。
想像を超える面白さで、衝撃を受けた。
舞台はスコーネというスウェーデンの田舎町。
農家の老人が殺されるところから話が始まる。
ヴァランダー刑事たちの懸命な捜査にもかかわらず、なかなか犯人にはたどりつけない。
そして、犯人はとても意外な人物だった。
殺人事件の謎解きはとうぜん興味深いが、外国のミステリーを読むのはそれだけが楽しみではない。
スウェーデンの人がどういった土地で、毎日どんな暮らしをしているのか、どんな物を食べているのか、ということを同時に知ることができるのが大きな喜びなのだ。
日本ではスウェーデンなど北欧の国は、福祉国家の代表で、幸福度が高い先進国というような良いイメージがある。
でも実際に『殺人者の顔』を読むと、そんなイメージはふきとんでしまう。
この小説の舞台が1990年に設定されているからかもしれない。
34年前にスウェーデンは多くの問題をかかえていたが、今は理想的な国に変わったのだろうか?
一方、34年前のスウェーデンは現在の日本よりもだいぶ進んだ国のように思える。
特に移民政策において。
1990年のスウェーデンは無制限に移民を受け入れていたらしい。
移民/外国人が増えていくと、とうぜん地元住人の中に不安や恐怖心がわきおこり、それに耐えられない人たちが移民排斥運動を始める。
『殺人者の顔』には移民にかんする問題がかなりページをさいて説明されている。
主人公のクルト・ヴァランダー自身も、移民に対する自身の偏見とたたかいながら暮らしている。
人種差別は悪だ。
でも外国人に対する根元的な恐怖心はたしかに存在する。
その相反する複雑な感情とどうやっておりあいをつければいいのか。
それは私たちの問いでもある。
執筆者:椎名のらねこ
関連記事
-
-
インドをテーマにした本が読みたくて手にとった。 インドのカルカッタが舞台のミステリーだ。 作者はイギリス生まれのインド人。 『カルカッタの殺人』の主人公は、イギリスからカルカッタに赴任した白人のイギリ …
-
-
図書館で『マイ・ストーリー』を予約した オバマ元大統領の妻であるミシェル・オバマについては顔と弁護士だったということしか知らなかった。 ある日、本屋で『マイ・ストーリー』の試し読み版を読むと、とても面 …
-
-
(※ネタバレありです) 1. 念入りに殺された男/エルザ・マルポ 著者のエルザ・マルポはは1975年フランスのアンスニ生まれ、ナント育ち。 小説の舞台は前半はフランス北西部のナントの村、後半はパリ。 …
-
-
ネガティブ・ケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力/帚木蓬生
ネガティブ・ケイパビリティ 生きているといろんな問題が発生する。 自分に関するトラブルなら自分でなんとか事態に対処できるからいい。 しかし実際に起きるトラブルのほとんどが自分以外の他人に関わるものだ。 …
- PREV
- 異国に死す/ドナ・レオン
- NEXT
- クレジットカードと財布を立て続けに無くした