「住めば都」の真実
投稿日:2018年3月27日 更新日:
地方から上京してはや10年。最初の5年間は23区の東側で、後の10年は西側で暮らした。
時間があれば観光地めぐり。博物館・美術館を訪れ、祭りを見に行き、食べ歩き、遊び場所は尽きることがない。
地方にいたころは、東京にあまり良いイメージをいだいていなかった。バブル時代の六本木、眠らない巨大都市。
東京全土が六本木してると思っていたがそれは間違いで、六本木してるのは六本木だけ。浅草してるのは浅草だけだし、上野っぽいのは上野だけ。神楽坂を一朝一夕につくることはできない。
東京生活後半の5年間は試食販売の仕事で名の無き街をめぐった。私にとっては無名の無数の人が暮らす、スーパーしか存在しない街。駅からさらにバスに乗って見知らぬ住宅地にたどりつく。人と家しかない。
東京の大半は、実は名の無き街だったという事実。
スーパーしかない街は、部外者にはつまらない街に映る。仕事の前後に面白いものを探して散歩しても何も見つからず「ちぇっ」と思う。
最近ふと気づいた。私がここ5年間住んでいる街も、いちばん人が集まる場所は中規模のスーパーで、次に自慢できそうなのは食べログで評価が高いラーメン屋だ。
行列店といってもせいぜい4人の客が店の外で待っている程度の行列店。もちろんラーメンはとてもおいしい。
このマンションで最初に嫌だったのは洗濯機をベランダに置かなくてはならないことだった。
築35年は経っているだろう。2階建て10部屋の静かなマンションだ。大家さんがリフォームを繰り返しているので、入居当時、内装やキッチンのガス台まわりは新品だった。
不動産の若い担当者が「飲み屋が多い場所」と紹介したので、飲み歩くのをとても楽しみにしていたが、彼の勘違いだったようだ。
飲食店はなくもないけれど開店休業状態のものが少なくない。年季が入ってくたびれている。人がよく入っているのはどこの街にもある餃子のチェーン店、モスバーガー、ファミレスだ。
「もっといろいろあればいいのに…」と不満に思いながら暮らしていたが、仕事であちこちに行くうちに「ここはとてもアクセスのよい場所だ」ということに気づいた。
都内のスーパーならだいたい1時間弱で、乗り換えも1、2回で行けてしまう。最寄り駅が2駅あり、ひとつは都心にアクセスがよく、もうひとつは吉祥寺や立川などの西側方面にアクセスがよい。
他の試食販売者としゃべっていると、通勤時間が片道1時間半というのはざらなのだ。
今は「一生ここで暮らしたい」とまで思うようになった。これが名の無き街の実体なのだ。まさに「住めば都」現象。
執筆者:椎名のらねこ
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