なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

インド

印度 ミッドナイト・トリッパー/山下柚実

投稿日:2021年4月14日 更新日:

「インドを旅すると、とても好きになる人と二度と来たくないと言う人にくっきり別れる」というものがあるが、「二度と来たくない」と思う人とは、おそらく日本の常識や感覚をかたくなに持ちこんで、それを武器に対抗しようと闘ってしまった人ではないだろうか。

・・・『印度 ミッドナイト・トリッパー』にこう書いているように、著者の山下柚実は、びっくりするほどインドとうまく付き合える人だ。

インドを見くだしもせず、怖じ気づきもせず、対等な関係をきずいている。

インド名物の値段交渉も現地流の「コンプロマイズ(妥協)」を採用して、対等に渡り合っていく。

やはり日本人と見るとおとなしいのでインド人のカモになりやすいようだが、山下さんはインド商法に丸め込まれず、どこまでもはっきりと拒絶し、ダマされれば怒り狂う。

自分はこんなふうに絶対にふるまえないだろうと思う。

インドは昔から旅をしてみたい国の第1位だがいまだに実現できていない。

暑さが怖いし、異質の文化が怖い。物乞いが怖い。

山下さんにとっては2度目のインドの旅で、今回は一人旅だ。

インドは広い。

山下さんはインド西方パキスタンとの国境付近の砂漠の街ジャイサルメールでキャメル・サファリを体験する。

気温は43度。

御者のインド人の青年と一緒にラクダの背に揺られる。

逃げ場のない状況で、青年に夜のデートに誘われる。金を無心される。

無視していると、何ごともなくキャメル・サファリは終わった。

自分がインドに抱いているイメージが現実として立ち上り、同じ日本人女性である山下さんがインドの現実と組み合っている。

インドは甘くないので、インドの土地や気候、インド人との触れ合いがまるで格闘のように見えてくる。

もちろん敵(?)ばかりではなく、山下さんの味方もいる。インド人の友達。

山下さんにヒンドゥー教の話を聞かせてくれる浮世ばなれしたサドゥー(出家僧)。

2DK(?)のアパートで酸っぱ辛い漬け物のような保存食アッチャールの作り方を教えてもらう。

コフタ・カレーをごちそうになる。

コフタとは、ジャック・フルーツとチャナという豆の粉をこねて、揚げた団子で、カレーに入れるとコフタ・カレーができる。

読むだけでインドを旅した気分が味わえる、お腹いっぱいになれる本。

『印度 ミッドナイト・トリッパー』のAmazon商品ページ(単行本)

-インド,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

血に問えば/イアン・ランキン

イアン・ランキン著『血に問えば』”A Qestion of Blood”(2003)*リーバス警部シリーズ14作目 (*ネタバレありです) イアン・ランキンのリーバス警部シリー …

心臓は"切らない手術"で治しなさい

心臓は”切らない手術”で治しなさい/大塚俊哉

心房細動とウルフ-オオツカ法 自分が心臓弁膜症になったので、心臓病についてインターネットで調べたりして勉強した。 手術を受けるために心臓病専門病院に入院すると、同室の患者さん(Kさん)は心房細動という …

オカマだけどOLやってます

オカマだけどOLやってます。完全版/能町みね子

(※ネタバレありです) 男性が女性のふりして会社勤めをするなんて、まるでドラマの設定みたいだ。 実際に3年もOLやっちゃった人が、タモリ倶楽部でもおなじみの能町みね子氏。 正式?には性同一性障害の人で …

フロスト気質/ウィングフィールド

フロスト気質/ウィングフィールド R・D・ウィングフィールドによるイギリスのミステリー「フロスト警部シリーズ」の第4弾を読んだ。 (※以下ネタバレありです) 『フロスト気質』の特徴 1. 話が長い ミ …

紛争地の看護師

紛争地の看護師/白川優子

前から気になっていた「国境なき医師団」(MSF=Médecins Sans Frontières)に関する本を初めて読んだ。 国境なき医師団の活動はかなり特殊だ。 外国といっても、通常の医療体制が崩壊 …