なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

イギリス

ある詩人への挽歌/マイケル・イネス

投稿日:2022年3月7日 更新日:

(※ネタバレありです)

『ある詩人への挽歌』は評判のよいスコットランド・ミステリーだが、私にはあまりピンとこなかった。

スコットランドが舞台なのはうれしかったが・・・

当初『ある詩人への挽歌』で描き出される事件はシンプルに見えた。

クリスマス・イヴ。

雪が降りしきるスコットランドの村外れのエルカニー城で、城主ラナルド・ガスリーが塔から落ちて死亡した。

事故か? 自殺か? 他殺か?

事故現場がスコットランドランドの古城なので、作中で描写される城の内外の様子がうまく把握できないことが私を苦しめた。

「胸壁」(battlement?)などの城用語をインターネットで調べて画像検索しても、それでも城の構造がはっきりわからない。

城主が生活している塔の内部の構造が、謎解きの重要な要素になっているにもかかわらず・・・

また『詩人への挽歌』は登場人物が多く、そのほとんどが日本には存在しないような風変わりな人たちだ。

だから面白いともいえるのだが、古城の城主って・・・!? 

職業「靴直し」の老人ユーアン・ベル。

城主の「被後見人」(同居して世話をみてやっている若い女性)クリスティーン・マザーズ。

クリスティーンの恋人ニールは、ロミオとジュリエットばりに長年にわたってガスリー家と憎み合っているリンゼイ家の息子だ。

エルカニー城の使用人1は、紳士とはほど遠く、今にも喉を切り裂きに襲ってきそうな”悪党”ハードカスル。

使用人2は、ハードカスルよりかなり年上で見た目は魔女、痴呆気味で目が見えないハードカスル夫人。

使用人3は、イギリスの作品によく出てきがちな頭のよわい青年タマス。

まるでエリザベス朝の芝居に出てくる道化師や愚者のように自分の気持をどうとでも意味のとれる歌にのせて表わすクセがある。

内部まで暴風が吹きすさぶエルカニー城への闖入者(招かねざる客)1は、アメリカ人女性シビル・ガスリー(城主と同じ苗字だ)。

闖入者2は、イギリス人の金持ちの坊っちゃんノエル・ギルビイ。

事件解決に貢献するのは、エディンバラの弁護士アルジョー・ウェダーバーンと、スコットランド・ヤードの警部ジョン・アプルビイ。

この作品は、5人の登場人物による7つの語り/書き出しによって構成されているので、ますます取っつきにくい感じがする。

またトリックが奇抜で二転三転するので、城の構造がイメージできない問題とあいまって、頭がこんがらがってしまった。

『ある詩人への挽歌』は、本格ミステリー好きをうならせる作品であり、また日本から別世界に頭を飛ばしたい人間にもおすすめの作品だ。

『ある詩人への挽歌』のAmazon商品ページ(文庫版)

-イギリス,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

居るのはつらいよ

居るのはつらいよ/東畑開人

(※ネタバレありです) 東畑開人著『居るのはつらいよ<ケアとセラピーについての覚書>』をなんの前知識もなく読んだ。 京大の大学院で臨床心理学の博士号をとった27歳の青年が沖縄のデイケアのク …

『ガセネッタ&シモネッタ』by米原万里

(※ネタバレありです) はじめに 米原万里さんはロシア語の同時通訳者です。 数々の文学賞を受賞した作家・エッセイストでもあります。 『ガセネッタ&シモネッタ』は米原万里さんの外国ネタ満載のエッセイ集で …

男らしさの終焉

男らしさの終焉/グレイソン・ペリー

著者のグレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれのアーティストだ。トランスヴェスタイト(女装家)として有名。テレビ番組の司会者。ロンドン芸術大学の総学長。大英帝国勲章受賞者でもある。 ※ELLEにプ …

高峰秀子/夫婦の流儀

高峰秀子 夫婦の流儀

(※ネタバレありです) 人気女優の高峰秀子と監督/脚本家の結婚は、今の感覚でいえばちょっと風変わりなものだった。 結婚を打診された時点で、高峰は松山のことを仕事の関係者の1人としてしか見ていなかった。 …

街道をゆく40台湾紀行/司馬遼太郎

『街道をゆく』を読むと旅したくなる 学生の頃から欧米の文化に対するあこがれが強かった。 自分とまったく違うものに惹きつけられた。 だから一見日本と同質におもえる中国は今までほとんど視野に入らなかった。 …