ステージ4の緩和ケア医が実践するがんを悪化させない試み/山崎章郎
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副作用の少ないがん治療法
書評を読んで面白そうだと思ったのでAmazonで買った。
実際に読んでみると本当に面白かった。
私はまだがんになっていないが、がん家系なのでいつかきっとなると信じている。
がんになったら動揺するに違いないので、今からがん対策の本を読んで参考文献を増やしておいてもソンはない。
がんになった人は抗がん剤を飲む。
抗がん剤の副作用で髪の毛が抜けてしまう人もいると聞く。
だが、抗がん剤の副作用はそれだけではないのだ。
『がんを悪化させない試み』の著者である山崎章郎氏は、自身が医者である。
74歳でステージ3の大腸がんの手術を受け、その後、抗がん剤治療が始まった。
抗がん剤の副作用は人それぞれだが、山崎氏の副作用は大変重いものだった。
◎飲んだ抗がん剤:ゼローダ
◎副作用:(飲用開始から3週間後に発生)
1. 食欲の低下
2. 慢性的な嘔吐感
3. 下痢
4. 手足の皮膚の色が黒ずむ
5. 手足の皮膚がひび割れ、出血する
6. 指先がしびれる
抗がん剤治療開始から6カ月後にCT検査をした結果、両肺にがんの多発転移が見つかった。
ここで大腸がんはステージ4に移行した。
副作用が激しいので減薬や休薬もしたとはいえ、再発予防目的のゼローダに効果はなかったことが判明した。
では、今後の治療方針はどうすべきか?
次の段階の抗がん剤治療に進むのか?
「日常が壊れるほどの副作用」に再び耐えなければならないのか?
山崎氏は医者なので、自分自身でもがんの治療方針について研究、考慮を重ねた。
国立がん研究センターのホームページによると、抗がん剤治療はステージ4の固形がんに対する標準治療で、「標準治療」とは現時点での最良の治療であるという。
そして標準治療(抗がん剤治療)の目的は、延命や症状の改善である。これは別のいいかたをすれば「がんを治すことは難しい」ということ。
がんはまるで体内に巣食ったコロナウイルスのようだ。
抗がん剤でやっつけたと思っても、またたく間に進化して、抗がん剤に対抗する新種があらわれる。いたちごっこになってしまうのだ。
その闘いの間ずっと副作用で苦しみ、そのうち通院できないくらい体力が低下する。
医者からはがん治療の終了を宣告され、在宅ケア、緩和ケアに移行する。
山崎氏は現役の緩和ケア医として、2500人以上の終末期がん患者に接してきた。
つまり2500ケースのがんの経験を踏まえて、自身のがんについて考えることができる。
結果、抗がん剤治療はいったん中止して、がんに対抗する新たな手段を見つけることにした。
目的は「がんの増殖を抑制して、『無増悪生存期間』の延長を目指すこと」。
つまり、がん細胞が増殖するための原料を与えず、分裂・増殖するのを極力邪魔すること。
他の医者が書いた著作を参照して、自分の体を実験台にオリジナルの治療法を模索する。
最終的にたどりついた「がん共存療法」の内容は以下の複合体だ。
(1)MDE糖質制限ケトン食
(2)クエン酸療法
(3)少量抗がん剤治療
(4)クロノテラピー(時間治療)
(1)MDE糖質制限ケトン食
糖質を制限し、血糖値の上昇を抑制し、がん細胞の増殖を促進するインスリンの追加分泌を抑制する。
ケトン体は、糖質に変わり得る安全なエネルギー源で、胎児や新生児が成長に利用するものだ。
またケトン体そのものに抗がん効果があることがアメリカの研究で示されている。
「MDE糖質制限ケトン食」のEはEPAのEだ。
EPAはサバやイワシなどに多く含まれているオメガ3脂肪酸で、人間の体内では合成されない。
このEPAががん治療に効果的であることが研究されている。
「MDE糖質制限ケトン食」のDはビタミンDのDだ。
ビタミンDにも抗がん効果があることが研究されている。
「MDE糖質制限ケトン食」のMは、糖尿病治療薬メトホルミンのMだ。
インスリンの追加分泌を可能な限り抑制することを目的に服用する。
(2)クエン酸療法
クエン酸は、レモンやライムなどに含まれ、人間の体内でも生成されている必要不可欠な弱酸性の物質だ。
クエン酸にも抗がん効果があることが研究されているが、逆にがん細胞を元気づけてしまうこともあり注意が必要だ。
山崎氏の「クエン酸療法」では、クエン酸を他の薬剤(メトホルミン/シンバスタチン/δ−トコトリエノール)やサプリメント(コエンザイムQ10)と一緒にとることで抗がん効果を発揮させる。
(3)少量抗がん剤治療
山崎氏は、大腸がんに適応のある抗がん剤イリノテカンの少量点滴を開始した。標準治療の15分の1の分量だ。
ごく少量を使用することで副作用の苦しみを避けることができる。
また抗がん剤の効果には個人差があるので、少量で効果を発揮する体質の人がいないとはいえないのだ。
(4)クロノテラピー(時間治療)
人間の体内時計をもとにして、より効果的に抗がん作用を引き出す方法。
がん細胞の分裂・増殖は、真夜中の就寝中に活発化する。
なので、クエン酸や薬剤を夕食後に服用する。
がん共存療法研究所
以上の2年以上にわたる個人的な研究成果を踏まえて、山崎氏が「がん共存療法」をより広く一般に臨床実践するための研究所。
2022年10月以降に活動を開始する予定。
執筆者:椎名のらねこ
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