なんとか自分を元気にする方法

コロナで生活が楽になったような、苦しくなったような

『羆嵐』by吉村昭

投稿日:2018年9月6日 更新日:

『羆嵐(くまあらし)』by吉村昭(新潮文庫)

(ネタバレありです)

◎あらすじ

1915年12月9日、北海道の三毛別六線沢(さんけべつろくせんさわ)の村落でヒグマが2人の人間を襲った。
ヒトの味を覚えたヒグマは翌日も別の民家を襲い、4人が犠牲になった。
ヒグマにとって人間は他の鳥獣同様のエサにすぎない。

人と獣の立場が逆転する。
人は捕食される立場となり恐怖にかられ逃げ惑う。

この体重が300キロ以上ある巨大ヒグマを12月14日に銃で退治するまでのドラマが『羆嵐』に描かれている。

◎感想

対立関係は物語を盛り上げる。
この小説の中ではまず自然VS人間。

北海道の未開の地に無一文で入植した人間たちは無力だった。
大自然に押しつぶされそうになりながら他に行く場所もないのでギリギリ生きようとしていた。

そこにさらに凶暴な自然の創造物・巨大ヒグマが現れた。
獣VS人間の壮絶な闘いが開始される。

巨大ヒグマ1頭VS村民家族では闘いにもならない。

巨大ヒグマ1頭VS人警察の救援隊員200人の闘いでもヒグマが勝利するのが現実だった。

だが、巨大ヒグマ1頭VSヒグマ専門猟師1人の闘いで、最終的に猟師が勝利をおさめた。

人間VS人間の攻防。
北海道庁警察部の羽幌分署長に率いられた救援隊員200人VS嫌われ者のヒグマ専門猟師の息づまるような対立関係・攻防も読みごたえがある。

一般社会でも凡庸な組織VS才能に秀でた個人の関係・調整のむずかしさ、一つの目的に向かって力を合わせることのむずかしさ、心理的な葛藤はよく見られる。

また危機的状況においてはトップのとっさの判断力が試される。

この小説の登場人物のうち、最初はあまり目立たないが物語の後半に向かってだんだん存在感を増していく三毛別地区の区長の判断力はすごい。行動力もリーダーシップもある。

自分より立場が上の羽幌分署長と別の判断をし、それを実行していくすごさ。

このリーダーがいなければ事件はもっと陰惨なものに拡大していただろう。

区長VS酒乱のヒグマ猟師の攻防。

ヒグマ猟師VS巨大ヒグマの一触即発の真剣勝負。

静かな村落がある晩突然ヒグマに襲われたように、この物語は前ぶれもなく惨劇とその後の様子を淡々と描写する。

実際に起こった事件をもとに書かれた類を見ない作品です。

狩猟に興味がある人も、ない人も、ぜひ手に取ってみてください。

関連記事:『羆撃ち』by久保俊治

実際の三毛別羆事件の詳細はWikipediaに記されています->三毛別羆事件

-

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由

認知症のことがよくわかるオススメ本

(1)認知症の人が「さっきも言ったでしょ」と言われて怒る理由ー5000人を診てわかったほんとうの話/木之下徹 認知症と軽度認知障害の人を合わせると2020年の時点で1000万人を超えるそうだ。 実際、 …

フロスト気質/ウィングフィールド

フロスト気質/ウィングフィールド R・D・ウィングフィールドによるイギリスのミステリー「フロスト警部シリーズ」の第4弾を読んだ。 (※以下ネタバレありです) 『フロスト気質』の特徴 1. 話が長い ミ …

殺人者の顔/ヘニング・マンケル

(※ネタバレありです) スウェーデンの作家ヘニング・マンケルが書いた『殺人者の顔』を読んだ。 大人気のクルト・ヴァランダーシリーズ第1作目だ。 想像を超える面白さで、衝撃を受けた。 舞台はスコーネとい …

男らしさの終焉

男らしさの終焉/グレイソン・ペリー

著者のグレイソン・ペリーは1960年イギリス生まれのアーティストだ。トランスヴェスタイト(女装家)として有名。テレビ番組の司会者。ロンドン芸術大学の総学長。大英帝国勲章受賞者でもある。 ※ELLEにプ …

稲垣えみ子著 寂しい生活

寂しい生活/稲垣えみ子

テーマ 『寂しい生活』はお金の節約の本ではない。なぜなら節電生活をはじめたとき、著者の稲垣さんはまったくお金に困っていなかったからだ。 この本は、どんなライフスタイルを選びとるか?がテーマだ。 実験的 …