インド旅行記123/中谷美紀
投稿日:2021年9月4日 更新日:
女優の中谷美紀がインド旅行に?と、『インド旅行記』について知ったときに違和感を抱いた。
インドは社会的に成功した人が目指す場所ではない気がして。
①人生になにかあった人②なにもない人(ヒッピー的な)③人生を変えたい人④日本が合わない人がインドを目指すのかなと漠然とイメージしていた。
中谷美紀がインドに向かったのは①番で、『嫌われ松子の一生』の撮影にとてつもなく疲れ果ててしまったからだった。
また中谷氏がヨガを習っていることとも無縁ではなく、インド滞在中にもヨガクラスに参加したり、プライベートレッスンを受けたりと、インドを効果的に活用している。
中谷氏は女優なので、その世界にはまりやすく、なりきりやすいタチのようだ。
ヨガでもかんたんに無の境地というか、宇宙との一体感を感じる域に到達できてしてしまうのはうらやましい。
ほかに優れた点は、コミュ力の高さ。
ローカルガイドやドライバーのインド人はもとより、他国からの旅行者とも垣根をつくらず交流できてしまうところがすごい。
自分からも知らない人に話しかけるし、見知らぬ人からもよく話しかけられる。
女優としてのオーラや内面からにじみ出る魅力が他人を引きつけるのだろうか?
たとて自分がインドの同じ場所にいたとしても、誰一人話しかけてこず、スルーされるのは目に見えている気がする。
英語が堪能らしく、ローカルガイドや外国人の話をよく理解し、記憶している。
『インド旅行記』はまるでインドのガイドブックのようで、各地の見どころや観光ポイントに対する説明がほかの旅行記(エッセイ)よりも詳しいのが特徴。
男性が書くインド旅行記とも違って、自分と感性が近いと感じる。
中谷美紀がインドで心地よいと思った場所に自分も行ってみたいと思った。
それにしても2005年8月から2006年1月までのたった5か月の期間に、4度に分けてだが連続で3か月強も東西南北インドに滞在するとは普通じゃない(ちなみに当時彼女は29歳)。
(1)2005/8/2~9/8 北インド
(2)2005/9/30~10/27 南インド
(3)2005/12/1~12/13 東インド
(4)2005/12/21~2006/1/4 西インド
しかも、やはり誰もが言うように、インドの旅は楽ではなく、毎日が現地の気候、環境、人々との闘いなのだ。
中谷美紀もインドが好きではないといいつつ重ねて向かうのはなぜなのか?
『インド旅行記1北インド編』『インド旅行記2南インド編』『インド旅行記3東・西インド編』を読んでいちばん印象に残ったのは、『インド旅行記1』の最後(352ページ)に出てくるアメリカ人精神分析医キャロルとの会話だった。
(キャロル)
私は正直言って(神を)信じていないし、彼らの言う輪廻転生もあり得ないと思うわ。・・・でも精神分析医としては、彼らの祈りの習慣が大脳に刻み込まれて太い回路を作っていく過程には、とても興味があったわ。
(続く中谷氏の述懐)
それは、私がこの国に来て以来ずっと考えていたことに少し似ていて、祈りのもたらすものは、神の実在不在にかかわらず、人間の大脳レベルでポジティブな回路を作るにはとても有益だということだった。人々が目に見えない神の代わりに偶像を崇拝することについても、わかりやすい形での象徴が人々には必要なのだとようやくわかるようになってきた。
私は母親が信仰者で子どもの時から宗教を押しつけられて、宗教が大嫌いになった。
なのに世界中に宗教は存在し、機能しつづけている。
コミュニティの精神的な柱、実質的なよりどころというだけでは宗教の存在意義としては弱い気がしていた。
だが、祈りの繰り返しが大脳に機能するという説明には納得した。
逆に、PTSD(心的外傷後ストレス障害)では恐ろしい経験の繰り返しが大脳レベルでネガティブな回路を作ることを思えば、同じ現象なのだ。
祈りにはポジティブな効果が確かにあるのだ。
執筆者:椎名のらねこ
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