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『重版出来』by松田奈緒子

投稿日:2018年7月26日 更新日:

『重版出来』(じゅうはんしゅったい) by松田奈緒子

(※ネタバレありです)

◎まえがき

本当に漫画って面白い! 漫画家はすごい!

漫画雑誌はこんなふうにつくられる。
漫画家はこんなふうに漫画を創作している。
漫画家はこんなふうに苦しんで、こんなことを考えて生きている。
自分の世界観をゼロからカタチにしてこの世に送りだす苦しみのプロセス・・・。

松田奈緒子の『重版出来』には、漫画界の裏事情と魅力があますところなく描かれています。

内容が面白いだけじゃ漫画は売れない。

漫画にほれこんだ編集者・書店員の地道な努力によってブームが起きる奇跡と感動。

漫画に興味のあるすべての人におすすめです!

◎あらすじ・感想(1巻~11巻)

日体々大学女子柔道部でオリンピックを目指していた黒沢心(くろさわこころ)が主人公です。
ケガで柔道の道をあきらめ、好きな漫画の仕事につきたいと出版社「興都館」にエントリーします。
最終面接のシーンから漫画はスタート。

黒沢心は、明るく・さっぱり・前向き・変なこだわりがない・初対面の人ともすぐ仲良くなれる・3分以上悩まない・大食い・女子力低い・・・というようなキャラクターです。

出版界で働く人たちはけっこう地味な人が多く、ともすれば暗くて陰気になりがちな内容を明るくノーテンキな黒沢が救済します。
「こんな性格に生まれていれば人生にこわいものなし。羨ましい性格だな~!」と、逆タイプ人間は思います。

具体的な編集者の仕事内容は、担当の漫画家に原稿を依頼したり、原稿完成の電話を受けて家まで取りにいったり、必要な買い物があればおつかいしたりという細かい雑用の積み重ねのようです。

『重版出来』にはバリエーション豊かな漫画家の面々も登場します。
年恰好はさまざまです。
変人もいれば、常識的な人もいる。まじめな人もいれば、いい加減な人もいる。
陽性vs陰性。外向的vs内向的。目立ちたがりvs露出NG。
どちらかといえば常人よりも神経の繊細な人が多い、と編集者は言っています。

1本の漫画を描くだけでも重労働なのに、作中に複数の漫画を入れ子状態にしてしまう松田奈緒子、恐るべし!

漫画家だけではなく、漫画雑誌・単行本を作り出す裏方さんたち、校正者、印刷業者、フォント製作者、雑誌企画で漫画家にインタビューをするライター、カメラマン、映画化となればプロデューサー、脚本家、俳優も登場して漫画を盛り上げてくれます。

『重版出来』は、主人公・登場人物が互いに刺激・影響を受けながら成長していくストーリーでもあります。

ひきこもりの天才漫画家・中田伯が担当者の明るい黒沢をつうじて無名から人気漫画家に、自己実現を達成していく過程。

「ダウナー系」漫画家・府川悠はスランプ中。
デビュー2作目の『あに丸ジャンクション』が低空飛行のち3巻で連載終了。
担当者・書店員による電子書店・バナー広告・SNSを駆使しての奇跡の復活劇。

リアルな作り物の話。
だけど、この感動は本物。

読む漫画に迷ったら『重版出来』をぜひ手に取ってみてください!

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椎名のらねこ

コロナで仕事がなくなり、現在は徒歩圏内の小売店でパートしてます。自分の気晴らしに、読んだ本、美味しかったものなどについて昭和的なセンスで記事を書いています。東京在住。既婚/子なし。