トラウマをヨーガで克服する
投稿日:2019年1月23日 更新日:
人間嫌い
私は3歳ごろに受けたトラウマを大人になってからもずっと引きずっている。
「人間という生き物は自分に危害を加えるのでできるだけ近づかない」ということを母親から身をもって教わったのだ。
幼少期の刷り込みは強力で、以降「人間嫌い」として生きている。
だが変人であるのは生き苦しいことなので、トラウマの影響を振り落としたいと思い続けて努力している。
まだ実現できていないのが現状だ。
『身体はトラウマを記録する』
トラウマにかんするさまざまな治療方法や驚くべき成果を記述したベッセル・ヴァン・デア・コークの『身体はトラウマを記録する』を読むと、トラウマはけっして私たちの気の迷いではなく、脳の各部が変質しておかしな働きをするようになった結果だとわかる。
脳の危険に対する警報装置の故障によって、危険が去って何年も経ったあとでも、ちょっとしたきっかけで自動的に警報装置が鳴り響き、身体が麻痺状態/緊張状態/興奮状態/警戒態勢/戦闘態勢などの防御反応を示すのがトラウマだ。トラウマを受けた人は経験済みだが、脳のシステムが具体的な科学データによって証明されている。
『トラウマをヨーガで克服する』を読んだ感想
私のトラウマは幼少期に母親から受けた精神的/身体的な暴力で、それによって自分の人生はとても生きづらいものになった。
だが、他のトラウマサバイバー(トラウマを受けてそれを克服しようと努力している人)の経験を読むと、私のトラウマは軽いほうだと思う。
ずっと苦しみから逃れたいと思いトラウマ関連のいろんな本を読んだ結果、自分の体験を客観的に理解することができるようになり今ではだいぶ楽な気持ちで暮らしている。
最初は自分は生まれながらの欠陥品で、それは自分の罪なのだと思っていたが、実際にはそうではなく、外からの力によって自分の一部が壊され、その故障はなおりにくいことがわかった。自分に非がないことが判明してとてもうれしかった。
今、克服したいのは、「人間嫌い」だ。
どの瞬間にも「できるだけ人を避けたい」と思ってしまうクセを治したい。
仕事などで、なるべく人を避けたいと思う衝動をがまんして、できるだけ「どうせうまくいかない」「嫌なことが起こる」という先入観を頭から消して、人に話しかけるよう努力している。たぶん人をむやみやたらに避けることで自分は素敵なチャンスを逃して損をしているという気がするからだ。
『トラウマをヨーガで克服する』に何か有効なヒントが書かれていないかと思って購入した。
『トラウマをヨーガで克服する』の著者は、前述のベッセル・ヴァン・デア・コークのヨーガ・プログラムの共同開発者だ。
とくに前半はトラウマの構造を説明したり、実際の症例や治療の成果を示したりという部分が多い。
『身体はトラウマを記録する』とだいぶ内容がかぶっているので、読まなくてもいいくらいだ。
それに私は自分のトラウマを治したいのであって、他の人たちがいくらトラウマを克服しても、その成果をリストアップされても「もうわかったから」といいたくなる。
また、この本にはヨーガを指導する側に対するアドバイスが多数記述されている。
その部分も私には不要なものだった。
はっきりいって人間嫌いをなおすヒントは書かれていなかった。
でもヨーガにかんしては、つねに緊張状態にある自分をリラックスさせる効果はあると思う。
実際にお風呂などでためしてみたが、気持ちが静まって確かにリラックスできた。
トラウマをなおすためにどこから始めたらいいかというと、あまりに基本すぎて信じられないかもしれないが、呼吸法に注意するといいみたいだ。
息を吸うと交感神経が優位になり体を活性化させる。当面の問題に対処すべく体がある種戦闘態勢に向かっていく。
息を吐くと副交感神経が優位になり体の活性化をオフにする。
だからリラックスしたければできるだけ吐く息を長めに呼吸するといい。
肺呼吸では呼吸が浅くなりやすいので、腹式呼吸でなるべくお腹の中まで空気を吸い込むようにして、お腹からたっぷり息を吐き出すようにするといい。
私たちは睡眠中は自然に腹式呼吸をしているという。
目覚めているときもきっと意識的にできるはずだ。
とはいえ、吸う息と吐く息は等分なのでは?という疑問もうかんでくる。
そこで思いついたのは、歌を歌うと息を吐きだす時間が自然に長くなるので、副交感神経を優位にしてリラックスしたいときには歌を歌えばいいのではないかということだ。
緊張したときこそ、浅くて速い呼吸ではなく、吐く息を意識して大きな深呼吸をしてほしい。
肝心のヨーガについては、「トラウマ・センシティブ・ヨーガ」というものが紹介されている。
私の実家の近くにはヨーガ教室を開いている夫婦が住んでいて、もらったヨーガ教本を見ながらためしていたので子供のころからヨーガとは接点があった。
そういう一般的なヨーガと比べると、トラウマ・センシティブ・ヨーガは型やポーズにそれほどこだわらない初心者でもとりくみやすいヨーガだと思った。
動きと呼吸を一致させることにもそれほど厳しくないのでやってみてとても楽だった。
このゆるさがとても気に入った。
ヨーガは心身をリラックスさせてくれるので、この本を見ながら気軽にためしてみるといいと思う。
自分の身体と仲良くなれるし、余計なことを考えず、今ここに存在する自分に集中することができる。
結局トラウマにかんしては、なんとか自分で自分を救うしかないのだから。
■トラウマをヨーガで克服する – D・エマーソン、E・ホッパー
トラウマをヨーガで克服する – デイヴィッド・エマーソン、エリザベス・ホッパー(紀伊國屋書店)
関連記事:トラウマは克服できるのか?
執筆者:椎名のらねこ
関連記事
-
(※ネタバレありです) 主人公はボンベイの事務弁護士 作者のスジャータ・マッシーは1964年イギリス生まれ。父親はインド人、母親はドイツ人。 『ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち』の主人公はパーヴィ …
-
(※ネタバレありです) アイルランドのミステリー小説 『道化の館(上・下)』にはアイルランドの架空の村「グレンスキー」を舞台に起きた殺人事件が描かれている。 グレンスキーは小さな村で、地元の警察は頼り …
-
(※ネタバレありです) スウェーデンの警察小説にはまっている。 ストックホルム警視庁殺人課のマルティン・ベックが主人公のシリーズ全10冊だ。 先日全巻を読了した。 (出版年)(タイトル)1965 ロセ …
-
感想 藤田宜永と同じく作家である妻の小池真理子が推薦していたので買って読んだ。 「母と一緒にいることが、僕の人生の最大の不幸としか思えなかった」 ・・・という記述がある藤田宜永の自伝的小説だ。 私自身 …
- PREV
- 小三治の落語は混むからもういいや。
- NEXT
- 目が充血する原因