リンドグレーン
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(※ネタバレありです)
あらすじ
スウェーデンの人気作家アストリッド・リンドグレーン(1907~2002)の自伝的映画を神保町の岩波ホールに見にいった。
アストリッド・リンドグレーンが16歳のときから物語ははじまる。
少女時代から他の兄妹たちとは異なる強烈な個性の持ち主で、母親の心配の種だった。
やはり将来作家になるような女の子はこうなのかと思わされる。
もともと文章を書くことが得意で、新宿に投稿した文章が編集長の目にとまり、16歳で新聞社の編集長の助手としてスカウトされる。
18歳のときに離婚裁判中の編集長と恋人の仲になり、アストリッドはほどなく妊娠した。
当時のスウェーデンの田舎では、未婚の娘の妊娠は許されないことだった。また男性の不貞行為も厳しく糾弾された。
当事者と両親以外には妊娠中であることは絶対にバレないようにと、アストリッドはストックホルムの秘書学校に送られることになる。
せまい村のことで、アストリッドと編集長の関係はバレてしまう。
そして編集長は姦通罪で有罪となり刑務所に行く可能性についてアストリッドに伝える。
このような状況下で2人が結婚して子供を育てることはむずかしく、アストリッドは窮余の策でデンマークのコペンハーゲンで出産して、事態が収束するまで子供を里親に預けることを余儀なくされる。
産み落としたばかりの子とひきさかれる辛さが画面から胸にせまってくる。
訳ありの女性のサポーター兼里親であるアニーはこの道のベテランで頼れる存在だ。
海を越える旅費もかかることで、アストリッドは息子の成長を見守ることさえままならない。
編集長と妻の離婚裁判も思うようにスピーディーには進まない。
結局、姦通罪は罰金を支払うことで片付いて、離婚も成立し、晴れてアストリッドと編集長は結婚できることになった。
が、妊娠・出産・新生児との別れなどで苦しみ抜いたアストリッドに対して、かなり年上の編集長の払ってきた犠牲は少なく、また彼にはアストリッドを死ぬほど苦しめたという自覚がほとんどない。
この子供をつくった男女がひきうける犠牲の格差と、編集長の恐るべき鈍感さに違和感をおぼえたアストリッドは、編集長からの求婚をどうしても受けられず、2人は分かれる。
その頃、コペンハーゲンで息子を養育してくれていたマリーが重病にかかり、アストリッドは息子を強制的に引き取らなければならなくなった。
息子はすでに2歳になっており、里親のマリーをママと呼び、アストリッドが誰かわかっていない。
秘書として自動車を販売する会社に勤めてはいたが、お金もなく、十分な家具もない部屋にとりいそぎ息子を引き取った。
息子はアストリッドに懐かず、セキが止まらない病気にかかったものの、病院に連れていくお金もない。
アストリッドにできることは、一晩中心配しながら息子の様子を見守ることだけだった。
日中、仕事中にうたたねしてしまい、ボスに呼び出される。
怒られると思いきや、ボスは息子の病気が治るまで出社しなくても大丈夫だと、親切な提案をしてくれた。
しかもアストリッドのアパートに自費で医者を派遣してくれた。
息子は百日咳で、時間の経過とともにセキはおさまるという診断だった。
息子が治癒し、アストリッドは会社に出社してボスに感謝した。
このボスこそが、のちにアストリッドの夫となるリンドグレーン氏だった(残念ながら結婚に至るまでのなりゆきは本作では紹介されない)。
アストリッドの息子をどうしても孫と認めなかった実家の両親とも和解したところで、この作品は終わる。
感想
女性にとっては生々しく、見るのに精神的負荷がかかる映画である。
過去に妊娠や出産にかかわるトラブルを経験したことのある女性は、かなり刺激的なので見ないほうがいいかも。
ただ日本でも有名な『長くつ下のピッピ』『ロッタちゃん』『やかまし村の子どもたち』の作者の若い頃にこんな事件があったということ、それがその後の創作につながったということを知りたい人にはおすすめ。
スウェーデンの自然の風景が美しい(雪が多くとても寒そうだが)。
アストリッド役のアルバ・アウグストは若く、魅力的で、みずみずしく、この役にピッタリだ。
ほかの役者俳優たちも渋くて存在感があり、映画を重厚な仕上がりにしている。
執筆者:椎名のらねこ
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