ぶどうの木/坂本洋子
投稿日:2020年11月25日 更新日:
2020年6月27日付朝日新聞朝刊”be”の「フロントランナー」で坂本洋子さんのことを知った。
里親として他人の子どもを18人も育ててきたという。
「こんな人がいるんだ!」と驚き、感動した。
実の子どもを1人育てるだけでも想像以上に大変だということが最近はよくいわれている。
なのに里親となり、重い事情のある子ども(障害児含む)を次々と養育していくなんて、神ワザとしか思えない(坂本さん夫婦はキリスト教徒だ)。
もっと詳しい内容を知りたいと思い、図書館で坂本洋子さんが書いた『ぶどうの木ー10人の”わが子”とすごした、里親18年の記録』(単行本は2003年出版)を借りて読んだ。
この本は里親の実体験を書き記した内容だが、これを読んで「私も里親になりたい!」と思う人がいるだろうか・・・と思うほど、厳しい現実が描かれている。
子ども自身にはまったく非がないのに、特に乳幼児(2~3歳)時代に安心感を得られない環境に置かれていた子どもは、その後の人生でも不安定な行動を取りがちになる。
また施設で集団で育てられるという経験によって、家庭で育てられるのとは異なる行動パターンが生まれることもある(所有意識が希薄/自分の物と他人の物の区別ができない等)。
そして小学校に上がり、他の一般家庭で育った子どもたちと生活するようになると、施設で育った子どもの行動だけが集団生活から浮き上がってしまう。
他の子どもとトラブルを起こして学校から電話がかかってくることなど日常茶飯事だった最初の里子の純平君。
里親になることは「多様性」と真正面から向き合うことのようだ。
里子がたとえ3歳であってもすでに生まれてから3年分の経験をずっしりと背負っており、とても一筋縄では行かない。
こういう現実があるということを知りたい人に読んでほしい。
執筆者:椎名のらねこ
関連記事
-
-
「寿町のひとびと」 神奈川県横浜市中区にある寿町(ことぶきちょう)という街を知ったのは、朝日新聞出版のPR誌『一冊の本』からだった。 『一冊の本』は朝日新聞出版の新刊本を紹介・PRするのが主な目的の月 …
-
-
ネガティブ・ケイパビリティ-答えの出ない事態に耐える力/帚木蓬生
ネガティブ・ケイパビリティ 生きているといろんな問題が発生する。 自分に関するトラブルなら自分でなんとか事態に対処できるからいい。 しかし実際に起きるトラブルのほとんどが自分以外の他人に関わるものだ。 …
-
-
※随時更新中 ◎人間が物理的に壊れていく様子を描いたリアルにこわい本 【1位】『朽ちていった命:被曝治療83日間の記録』NHK「東海村臨界事故」取材班(著) 人間の皮膚が再生できなくなると中身が露出さ …
-
-
(※ネタバレありです) サークル・オブ・フレンズ ダブリン出身のモーヴ・ビンキーが1990年に書いた『サークル・オブ・フレンズ』は、アイルランドの小さな村を舞台にしたとびきり愉快な青春小説。 ベニー・ …
- PREV
- 高卒の国家公務員の給料を調べてみた
- NEXT
- 池波正太郎の銀座日記[全]