高峰秀子 夫婦の流儀
投稿日:2021年2月28日 更新日:
(※ネタバレありです)
人気女優の高峰秀子と監督/脚本家の結婚は、今の感覚でいえばちょっと風変わりなものだった。
結婚を打診された時点で、高峰は松山のことを仕事の関係者の1人としてしか見ていなかった。
だが、結婚相手としての可能性を検討するうちに、結婚相手としてはベストな人間ではないかと考え、2人は結婚した。
高峰秀子の女優としてのキャリアはピークに達していた。
松山善三は無名の映画人だった。
高峰30歳、松山29歳。
結婚当時、妻の収入の方が夫よりも圧倒的に多かった。
高峰の映画出演料1本250万円、松山の月収1万4、5千円。
夫の松山はそのことをあまり気にしなかったという(気にする性格なら結婚できない)。
妻の高峰は気にして、夫の立場を気づかっていた。
松山が映画人としてのキャリアを積み、収入が増えるにつれて、もともと裏表のある女優業が嫌いだった高峰は仕事を減らしていった。
高峰は主婦業は嫌いでなかったらしい。
夫婦には子供ができなかった。
海外の病院でそのことを調べてもらった高峰は、自分は子供時代に苦労をして、子供を欲しいと思わなかったけど、子供をたくさん欲しがっていた松山に終生引け目を感じ続けた。
夫婦は本書の作者である斎藤明美を養子にして可愛がった。
2009年に斎藤明美が養子になったとき、斎藤は53歳、高峰は85歳、松山は84歳だった。
高峰は翌年亡くなり、高峰の希望どおり斎藤は松山のご飯を彼が91歳で亡くなるまで作り続けた。
自分の夫婦関係について悩んでいるときにたまたまこの本を手に取った。
高峰秀子と松山善三のカップルはめったにケンカもせず、仲睦まじい理想の夫婦で、読むことで自分たちの身に比べてかえって落ち込んでしまったくらいだ。
恋愛結婚した者同士でなくても仲良く55年以上も結婚生活を続けることができるという実例で、まれにみる「理想の夫婦」だ。
執筆者:椎名のらねこ
関連記事
-
『愛という名の支配』を読んで 『愛という名の支配』は1992年に出版されたフェミニズム本だ。 約30年前の女性差別の状況が書かれているが、状況は今もまったく変わっていない。 日常的に「生きづらい」「し …
-
日本人の身体は存在感を失った? 日本人の身体が特にここ50年で(2000年時点)悪い方向に大きく変わってきたことが説明されている。 確かに現代の日本人の身体は、着せ替え用のマネキン程度の存在感しか示す …
-
感想 藤田宜永と同じく作家である妻の小池真理子が推薦していたので買って読んだ。 「母と一緒にいることが、僕の人生の最大の不幸としか思えなかった」 ・・・という記述がある藤田宜永の自伝的小説だ。 私自身 …
-
バリ島の魅力 バリ島旅行から帰って読んだ本。 バリ島は評判以上に素敵で、気持ち良く、夢中になってしまった。 バリ島をあらわすには、「神々の島」という言葉がいちばんぴったりくる。 バリ島に一歩踏みいれた …
- PREV
- 007/わたしを愛したスパイ/イアン・フレミング
- NEXT
- バタ焼きパンでベーコンチーズサンド