『あなたの旅立ち、綴ります』
投稿日:2018年3月16日 更新日:
◎あらすじ
(ネタバレありです)お金持ちの元実業家ハリエット・ローラー(シャーリー・マクレーン)が主人公。81歳の彼女は、小ぎれいな家で使用人をつかい、美しい服を着て何不自由なく一人で暮らしている。
だがもう仕事はとっくに引退してしまった。口が悪くきつい性格のため親しくつき合う友人もなく、家族とも疎遠になっている。ひとりぼっちで毎日とくにやることもなくむなしい気持ちを抱えている。
だがある日、ハリエットは、新聞の訃報記事専門ライターに、自分の訃報記事を書かせることを思いついた。自分の監督のもとに…。そこから彼女の人生はエキサイティングなものに変わっていく。
訃報記事を依頼したのはアンという女性(30歳前後?)だ。新聞社で訃報記事を7年間書き続けているが、アンの本当の夢はエッセイで名を売ることだ。現状では自分の文章に自信がもてず、小さなノートに趣味のようにエッセイを書き綴っている。
ハリエットは家族・知人のリストをアンにわたした。アンは訃報記事に使える美しいネタを求めてリスト中の人々を訪ねたが、ハリエットのことを良く言う人はひとりもいなかった。その事実を聞いたハリエットは逆ギレしたが、ついに、美しい訃報記事を書いてもらうために自分を美しく変えることを決断した。
ハリエットは、理想の訃報記事をつくるために、施設をたずね9歳の黒人の少女ブレンダの世話を焼きはじめる。また、ラジオ好きのアンの言葉からインスピレーションを得て、ラジオ局に乗り込み、かつては憧れだった音楽番組のDJの仕事を獲得してしまう。
ハリエットの訃報記事作成にかかわる一連の動きがあちこちで化学反応を起こして、関係者の人生は新たなステージに進むことになる。ハリエットは、長年不仲だった娘とも再会を果たし和解した。「悪い母親」と自分にレッテルを貼っていたハリエットだが、現在の娘が夫や息子2人と共に幸せに暮らしていることを知り、自分は「良い母親」だったと考えを改めた。
◎テーマ
「自分の人生をしぼませないで!」
…というのが、この映画のテーマだ。
別の言い方をすれば「自分の可能性をあきらめないで!」ということ。
ハリエットと深くかかわるようになったアンは小さい頃に母親に見捨てられた。ブレンダには父親がいない。そのことが2人の心の一部をしぼませている。
ハリエットは最強だ。これまで出会ったほとんどすべての人に嫌われながらも、自分の直感を信じて、その可能性を十二分に発揮して生きてきた。
2人はハリエットとかかわることで、人生においては失敗をおそれず、過去よりも未来に目を向けて行動すべきことを学ぶ。
◎感想
いま私たちはどちらかといえばしぼんでいっていると思う。
私ひとりの問題ではなく全体的に人生がしぼんでいっている印象を受ける。
しぼんでいくというのは、各自の人生の可能性(選択肢)や行動の自由が、見えない壁やルール、自己規制によって制限されていく状態かもしれない。
経済的な制限は常につきまとうが、そこで「だからもうすべてダメだ」とあきらめるのではなく「どこかに自分の眠っている才能をいかせる余地がないか」「工夫次第で生きていて楽しいことをひとつでも増やせるのではないか」と考え、なにか行動してみるのが大事なのではないか。
ハリエットを見てそんなことを考えた。
実生活でいろんな人に会って話していると、どんな人にも素晴らしい点があることを発見する。
最初は嫌いな人でも、数か月以上嫌々かかわっているうちに、意外な長所を見つけてしまうことは多い。また、自分の長所に気づいていない人もかなり多いように思う。なので、チャンスがあれば指摘するようにしているが、私たちはみんな今よりももっと輝ける素質をもっているような気がする。ただ、自分自身を正当に評価したり、客観視するチャンスが日常的に、生涯を通じてあまりない。またハリエットが持っているような個性をはかるモノサシはあまり日本では販売されていないようにも思う。これから各自、自主制作するしかないだろう。
◎音楽
ハリエットとアンの意外な共通点は、ラジオで音楽番組を聞くのが好きなことだ。
商業主義が入りこんできてつまらなくなったので音楽番組を聞くのをやめたとハリエットに言わせる映画なので、音楽にも力が入っている。古い音楽が多いが、キンクスは好きだったのでハリエットのお気に入りバンドとして映画に登場してうれしかった。
◎DATA
題名:『あなたの旅立ち、綴ります』
原題:”The Last Word”
2017年・米・ドラマ/コメディ・1時間48分
監督:マーク・ペリントン
主演:シャーリー・マクレーン、アマンダ・セイフライド
ストーリー:http://tsuzurimasu.jp/story/(公式サイト)
執筆者:椎名のらねこ
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